パプリカ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2002年10月30日発売)
3.62
  • (274)
  • (387)
  • (595)
  • (68)
  • (18)
本棚登録 : 4411
感想 : 409
5

Wikiによれば、筒井康隆は1965年に関西から東京に転居し、そこから本格的に作家活動を展開したらしい。第一短編集「東海道戦争」は1965年の発行ということなので、かれこれ60年近く前のことだ。最新の短編集「カーテンコール」は、2023年11月の発行、60年近くを経て、なお現役の作家であるという怪物のような人だ。ちなみに、1934年9月生まれなので、現在89歳。
私自身は、筒井康隆の作品は中学生から高校生の頃によく読んでいた記憶がある。それ以来、遠ざかったいたので、50年近くぶりに筒井康隆の本を読んだことになる。

主人公の千葉敦子は、精神医学研究所に勤めるノーベル賞候補の研究者であり、また、セラピストでもある。一方で、18歳の少女である夢探偵パプリカとして神経症の治療も行っていた。治療方法は、患者の夢の中に忍び込み、うつ病などの原因となっていたものを見つけそれに対処するものである。現実世界から、他人の夢の世界へ忍び込み活動するというのは、SFとしては驚くような話ではないだろう。
しかし、この小説では、夢の中の行動が実際の現実に影響を及ぼすことが可能となる。すなわち、現実と夢の区別がつかなくなる。夢の中では、人は荒唐無稽なことも(例えば空を飛んだり、動物になったり)行えるが、夢の中での、ある人の突拍子もない行動が、現実世界の人たちに影響を与えるようになるのである。
こうなると、何が何だか分からなくなる。実際、現実世界から夢の中に忍び込んでパプリカが神経症の治療を行う部分はストーリーもよく理解できたが、現実と夢の区別がなくなってからは、何でもありとなり、ストーリーはどうでも良くなってきてしまった。しかし、筒井康隆は、そういう訳の分からない世界を、小説としてまとめてしまう。何だかよく理解はできないが、圧倒的な文章力によって、最後まで一気に読まされてしまう。

中学校・高校の頃も、思いもつかないような世界に連れて行ってくれる筒井康隆の小説が好きだったな、ということを思い出した。久々にまた筒井康隆を読んでみようという気になった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年12月18日
読了日 : 2023年12月18日
本棚登録日 : 2023年12月10日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする