須賀敦子全集 第3巻 (河出文庫 す 4-4)

著者 :
  • 河出書房新社 (2007年11月2日発売)
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感想 : 18
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須賀敦子全集の第3巻は、大きく分けて4編が収められている。文庫版の裏表紙の紹介をここに引用しておく。

【ユルスナールの靴】
20世紀フランスを代表する作家と自らを重ね合わせながら紡ぐ魂の二重奏。
【時のかけらたち】
ヨーロッパの建築や美術をめぐる施策の軌跡、出会った人々の思い出。
【地図のない道】
「なによりもまず私をなぐさめてくれる島」として須賀が愛したヴェネツィアの記憶。
【エッセイ/1993~1996】
画期的論考「古いハスのタネ」他18編。

「ユルスナールの靴」は、フランスの小説家である、マルグリッド・ユルスナールの作品、あるいは、生涯を題材にとったものである。私は本書を読むまで、マルグリッド・ユルスナールという小説家を知らなかった。ユルスナールのことを知らない人が読むには、非常にハードルが高い。
「時のかけらたち」も、ヨーロッパの建築や美術に、ある程度の造詣があることが前提で書かれており、私にとっては、これも非常にハードルが高かった。
残りの2編は、そのような基本的な知識を必要としない、そのまま読んで楽しめるエッセイであった。「そのまま読んで楽しめるエッセイ」と書いたが、軽く書かれた流し読みが出来るようなエッセイではない。構成も緻密だし、取材も行き届いているし、「ザッテレの河岸」などは、実際に対象となるものに、須賀敦子が興味を持ち始めてから相当に長い年月を経て書かれたものである。そういう意味では、須賀敦子の作品は、楽しんで読むことは出来るが、気が抜けないという印象を強く持つ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年3月6日
読了日 : 2022年3月6日
本棚登録日 : 2021年6月17日

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