十二章のイタリア (創元ライブラリ)

著者 :
  • 東京創元社 (2021年1月28日発売)
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本棚登録 : 223
感想 : 11
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内田洋子さんの本をはじめて読んだのは昨年の7月なので、ちょうど1年が経っている。このブグログでの感想を読んで面白そうだと思ったことが読み始めるきっかけだったと思う。本書「十二章のイタリア」が私にとっての11冊目の内田洋子さんの本になる。
内田さんは東京外大のイタリア語学科に入学される。そこから内田さんのイタリアとの付き合いが始まり、本書もそこから始まる。書名になっている通り、十二の短めのエッセイを集めたエッセイ集である。内田さんの魅力的なイタリア経験がそこでは語られているが、本書の各章に共通するモチーフは「本」である。
各章の題名は、「辞書」「電話帳」「レシピ集」「絵本」「写真週刊誌」「巡回朗読」「本屋のない村」「自動車雑誌」「貴重な一冊」「四十年前の写真集」「テゼオの船」「本から本へ」である。「テゼオの船」だけが、本と何の関係があるのかが分かりにくいが、これはイタリアの巨匠、故ウンベルト・エーコが設立した出版社の名前なのである。
このブグログに登録をされている方は基本的に本好きの方ばかりだと思う。私ももちろんそうである。内田さんの本書に促されるように、「本」に関してのエピソードを自分が思いつけるかを考えてみた。が、すぐに、いくらでも思いつくことが分かった。小さい頃に両親に買ってもらった「宝島」「十五少年漂流記」などの冒険物語。小学校高学年で夢中になって読んだ、アルセーヌ・ルパンとシャーロック・ホームズ。中学生・高校生の頃に読んだ日本の現代作家の小説の多くの舞台が東京であり、地方から東京に対する想いがつのった。大学に入って初めて読んだ英文の経済学の教科書のボリュームと、勉強することの大変さ。まだまだ沢山ある。こんなに本に対しての思い出がすぐに沢山出てくることに、逆に驚いた。
正確な生年月日は分からないが、本書を読んだりして、内田さんはおそらく私よりも一学年下にあたるのではないかと思う。学科はイタリア語ではないが、私自身も高校3年生の時に東京外大を受験するつもりで願書を出した。結局は東京外大の受験日までに合格していた大学に行き、外大は受験しなかったのであるが、もし、受験し万が一合格していたら、同じ時期に内田さんと同じキャンパスで学べたのだなと少し感慨がある。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年7月26日
読了日 : 2021年7月26日
本棚登録日 : 2021年7月25日

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