災厄の町 (ハヤカワ・ミステリ文庫 2-12)

  • 早川書房 (1977年1月30日発売)
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本棚登録 : 179
感想 : 24

 エラリー・クイーンのミステリは好きだけど、ライツヴィルものは初めて。国名シリーズや悲劇シリーズをディフォルトと考えている読者には、かなり異質なものに感じられ、最初は退屈だった。

 最終的に決め手になる情報はともかくとして、犯人はかなり早い段階で見当がついてしまった。人情ドラマにのめり込まなければ結論はわかりやすい。クイーンが結論を出せないのは情報が入らなかったからであり、「ギリシア」コンプレックスがうらめしい。

 まあそういう意味では、ミステリとしてはたいした作品ではないのであって、最後の謎解きなどは、なんというかミステリの形式をなぞったようなものだと思った。
 むしろこれは、良くできた人情ドラマであり、そういう気持ちで読めばとってもおもしろかった。それこそ、最初に犯人が明示された倒叙ミステリであっても、かなりおもしろいものになったのじゃないかと思う。裁判のシーンなど、そういう観点から読みたかった(というより読み直したらおもしろかった)。

 とにかく不思議な読後感で、このシリーズをもうちょっと読んでみよう。
2007/1/17

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 海外の小説
感想投稿日 : 2010年8月29日
読了日 : 2007年1月17日
本棚登録日 : 2007年1月17日

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