エラリー・クイーンのミステリは好きだけど、ライツヴィルものは初めて。国名シリーズや悲劇シリーズをディフォルトと考えている読者には、かなり異質なものに感じられ、最初は退屈だった。
最終的に決め手になる情報はともかくとして、犯人はかなり早い段階で見当がついてしまった。人情ドラマにのめり込まなければ結論はわかりやすい。クイーンが結論を出せないのは情報が入らなかったからであり、「ギリシア」コンプレックスがうらめしい。
まあそういう意味では、ミステリとしてはたいした作品ではないのであって、最後の謎解きなどは、なんというかミステリの形式をなぞったようなものだと思った。
むしろこれは、良くできた人情ドラマであり、そういう気持ちで読めばとってもおもしろかった。それこそ、最初に犯人が明示された倒叙ミステリであっても、かなりおもしろいものになったのじゃないかと思う。裁判のシーンなど、そういう観点から読みたかった(というより読み直したらおもしろかった)。
とにかく不思議な読後感で、このシリーズをもうちょっと読んでみよう。
2007/1/17
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
海外の小説
- 感想投稿日 : 2010年8月29日
- 読了日 : 2007年1月17日
- 本棚登録日 : 2007年1月17日
みんなの感想をみる