怪しい花婿 (ハヤカワ・ミステリ文庫 3-3)

  • 早川書房 (1976年6月1日発売)
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感想 : 1
3

夜なべをして仕事をしているメイスン弁護士がふとオフィスの窓から外を見ると、オフィスのあるビルの非常階段に美女がたたずんでいて風にふわりとスカートが巻き上げられ、というのが発端。あれよあれよという間に物語が展開していき、メイスンの依頼人が容疑者となる殺人事件が起きるまでずいぶん読み進めなければならないのだけど、あっという間にそこまで引っ張られてしまう。

相変わらずスリリングな法廷シーンだが、今回は前半を検事の視点で書いているので、絶対に不利なはずのメイスンの不敵な戦略がかえって浮き彫りになっておもしろい。ホント、敵に回したらいやだろうなと思う。まあ、よくこれで依頼人が犯人でないという勝利を勝ち取ったものだと思うけれど、もうひとつすっきりとはしない。現実的に、そんなことあり得ないだろう、って思ってしまう。

つまり、どう考えても犯人としか思えないような言動を行った者以外に別の犯人がいるとして、こんなことになれば別の人が犯人ってこともあり得ないわけではないですよね、という論理の遊びみたいなものがそのまま正解になっているような感じがする。これでは、敵側の登場人物がかわいそうだとちょっと同情をしてしまった。

というわけで、今回わりあい好きなのは、途中ちょろっと登場してかなり喰えないところを見せるトラッグ警部と、最初こそ印象的なものの次第に影が薄くなったと思えば…という訳のわからない存在の「非常階段の美女」なのである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 海外の小説
感想投稿日 : 2011年12月8日
読了日 : 2011年12月8日
本棚登録日 : 2011年12月8日

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