よくできたミステリだと思う。スタートも快調だし、次々と見えてくる新事実もわくわくする。最後はそれなりにサプライズがあるし、なによりも感動的。文体はちょっとシニカルで、ユーモラス。本当に、この作者、よーく勉強してきていると思うし、うまく書いてる。気持ちよく読むことができた。
だけど、傑作!ってうなれないのは、何となく全体的にそつがなさ過ぎるような感じがするのがひとつ。いろんな要素が盛り込まれていて気持ちが良いんだけど、全部が上手にきちんと書いてあるんだけど、どーんと胸に迫ってこないのである。
それは、もしかしたらディテールへのこだわりが感じられないからかもしれない。主人公は多分すごくいい奴なんだと思うし、アルツハイマーのお母さんをはじめ、感情移入しながら読める要素はたくさんあるはず。それなのに、何処か存在感が希薄なのだ。街も、登場人物すべてがそんな感じ。だから、本来、大感動して涙がバーバー出てきそうなラストにつながる設定が、「ああ、上手だな」で終わってしまう。すごくもったいない。
なんて言えるのは読み終わってしばらくしてから。読んでる間は、ページをめくる手ももどかしいくらい、読みふけることができた。おもしろい。
あ、今思ったんだけど、ハリーポッターシリーズにちょっと似てるかもしれない。
2004/12/21
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
海外の小説
- 感想投稿日 : 2010年8月28日
- 読了日 : 2004年12月21日
- 本棚登録日 : 2004年12月21日
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