鬼才半村良のデビュー作。まだ読んでいなかったことにびっくりしながら読んだ。さすがに迫力がある。
建築業を巡る争いのようなスタートから、あれよあれよという間にアトランティス大陸は出るわ、吸血鬼は出るわ、オオカミ人間は出るわ、巨石信仰とか、神とか生け贄とか、もうてんこ盛りである。あれよあれよという間にとんでもない世界に連れて行かれる。あっけにとられながら、引きずり回されていくしかない。
セックスが重要な鍵になっているため、それなりに濃厚な描写もある。色っぽいといえば色っぽいのだけど、なんだかイヤラシくない。セックスそのものを描くのではなく、人間が変質していく課程をそういう形で描いている気配がはっきりするからだろう。イヤラシくない代わりに、なんだか実に背徳的なにおいがして参った。
正直言って、読後の印象はあまりよいものではなかった。何というか、救いがなさ過ぎるのである。個性的な登場人物が多くて楽しめるのだけど、感情移入ができない。結末にしても、確かにわかるのだけどあまりにも空しい。そう思ってしまうのは、ミステリのような予定調和の本ばかり読みすぎている僕のせいだろうか。読み終わってからしばらく考えてしまったのである。
2009/5/15
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
日本の小説
- 感想投稿日 : 2010年9月22日
- 読了日 : 2009年5月15日
- 本棚登録日 : 2009年5月15日
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