歴史の作法―人間・社会・国家 文春新書 (文春新書 345)

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  • 文藝春秋 (2003年10月21日発売)
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情報化された今だからこそ、歴史の作法について学ぶことは重要である。歴史家には複雑な事件の連鎖を分かりやすく総合的に説ける資質と、生き生きとした叙述を通して、事件を物語の連関の中で表現できる能力が問われる。しかし、複雑な現代社会においてこれは歴史家ならずとも誰しも賢く生きるためには必要なことであろう。

「(中略)歴史はどの君主にとっても相談相手であり、歴史はどの相談相手にとっても主人なのである。また、どの宰相をも楽しませ、どの会話にも参加する相手となる。もし問いが発せられるなら、不思議な事物のなかでも驚くべき事柄を明示しながら、たちどころに適切な答えで応じる。その事柄とは、そこから有徳の心が休養を引き出し、賢者であれ大家であれ、スルタンであれ、完璧な魂が憧れるものなのだ」(シュアイリー「近代アラブ歴史学」)


過去の人間は賢かった。今まさに、歴史軽視の顕著たる我が国に聞かせてあげたい言葉だ。

現代の人には必要ないものなのかもしれない。しかし、ふと、暇なとき、なんでもないとき、振り返るというのは思慮浅い、昨今の現状になんと耳の痛い言葉だと思う。


(2009/5/25読了)

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 世界史
感想投稿日 : 2009年4月18日
本棚登録日 : 2009年4月18日

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