主人公である「噂の女」糸井美幸は輪郭しか描かれていない。連作短編でそれぞれの作品の中では主人公としては表現されず、それぞれの作品にはちゃんと主人公は存在している。しかしキーパーソンとしてこの糸井美幸は常に登場し、そして物語が動いていく。第1作から最後の第10作まで徐々にその真の姿があらわになっていく。なんと凝った作品か!
地方都市を舞台に第1,2作あたりではまだ糸井美幸は単なる派手な若い、そして男性を蠱惑する女性としか感じられないのだが、物語がすすむにつれ、読者に謎と疑問を与える存在となっていく。しかし筆致はあくまで軽快でユーモラスなタッチである。彼女を取り巻く男性たちの「おばか」加減にも笑える。
物語の終わり方もある意味、痛快。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2015年6月22日
- 読了日 : 2015年6月22日
- 本棚登録日 : 2015年6月22日
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