娘と私 (ちくま文庫 し 39-3)

著者 :
  • 筑摩書房 (2014年11月10日発売)
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感想 : 18

この小説は 1953年から1956年にかけて雑誌に連載された小説。今読んでみると昭和の小説でありながら現代小説ではなく、かといって古典でもない。この半世紀の間に日本の価値観や文化が著しく変化したということに驚かされた。
ほとんど著者の自伝的小説といえる作品。昭和初期にフランス人との国際結婚で得た一人娘を母親の死によって男手で育てていく。またその途中から再婚して娘にとっての新しい母親を迎え、家族を形成していく姿、そして娘の結婚までを描いている。
この時代の中流家庭がどのような生活をし、また第二次世界大戦をどのように受け止めていたかを実感できた。私自身、戦争は知らないが市井の人々はアメリカとの開戦まではそれほど切迫感や暗さはあまりなく、日常を淡々と過ごしていたのだと感じた。
また男女の関係は今この小説のような表現や内容では男尊女卑と言われそうな書き方をしている。それだけ、男女平等という関係が変化していったのだろう。若い人が読めば、私以上にその変化に驚かされるだろう。
ただ、表現や行動等は今とは違っても、父が娘を思う気持ちは変わりない。あの時代に国際結婚で生まれたハーフの子ども、しかも母親を幼いときに亡くし、新しい母親を迎えるまでの数年は本当に著者にとっては親鳥が雛を守るように必死に育てたという感覚がその行間にあふれている。
昭和初期の普通の家庭の日常や価値観を知ることが出来る作品だ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2015年2月9日
読了日 : 2015年2月9日
本棚登録日 : 2015年2月9日

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