独ソ戦 絶滅戦争の惨禍 (岩波新書)

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  • 岩波書店 (2019年7月19日発売)
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従来の独ソ戦評価の間違いを、開戦前の両国の政治状況、指導者(両国とも独裁者)の方針などから修正する書。
独ソ戦が大量の死者を出して壮絶を極めた背景。
ナチスドイツではヒトラーだけでなく国内にあった他者(反対思想者・ユダヤ人)への排除思想。これの行き詰まりによって、海外への略奪と搾取が掲げられた。対ソ戦の目的がこれであるので、合理的な戦争戦術が無視された(世界観戦争・収奪戦争)。
ソ連ではスターリン独裁体制完全によって、ロシア圏ナショナリズムの醸成、強制的な徴兵と国民動員、過酷な兵役、非合理的な戦線維持強要が成り立っていた。
この両陣営のぶつかり合いが独ソ戦の史上例の無い惨禍を生み出した。
また、捕虜への国際法違反の苛酷な扱い(劣悪な環境に押し込め大量の死者を出す・時には捕虜を殺害する)は両陣営で行われ、これも死者を増加させた。

独ソ戦にソ連が勝利した理由は、ドイツが戦術のみで戦ったのに対し、ソ連が戦略と作戦術(戦略と戦術の中間橋渡し法)を考えていたから。これは1812年のナポレオンの侵略や日露戦争の敗北などにより、古くからロシアで研究されていた。
また、ナチスドイツが敗北し消滅した理由もヒトラーによる世界観戦争が原因であった(講和や外交による戦争終結が選択肢に無いのが世界観戦争)。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 研究
感想投稿日 : 2023年1月26日
読了日 : 2023年1月31日
本棚登録日 : 2023年1月8日

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