地方都市をフィールドに活躍する建築家の人たちのこれまでの来歴や仕事の様子を読んで、ライフスタイルというのが決して一様なものではなく、それぞれの場所や周囲との人間関係に応じて自由に作っていけるのだということを感じさせられ、勇気づけられた。
建築家とはいっても、一般的にいう設計の仕事だけをしている方はむしろ少数派で、カフェなどの運営に携わっていたり、行政や地域の団体と地域おこしの取り組みに参画をしていたりと、様々な形で仕事をしている。
また、それらが仕事というだけではなく、暮らしの一部に入り込んでいるという面で、いわゆる会社勤めが中心になった戦後の日本のワークスタイルよりも前の時代の姿に、帰って行っているような印象を受けた。地方の方がコミュニティのスケール感がそのようなライフスタイルに合っているのだろう。
本書で原稿を書いている16名の中に、いわゆる大学での建築教育を受けていなかったり、仕事を始めてから建築をきちんと学び始めた人が複数いるというのにも、驚かされた。習うより慣れよとは言うものの、専門職のイメージの強い建築の領域で、このような形で仕事を始めることができるというのも、認識を新たにさせられた。
おそらく、それぞれの方にかなりの苦労があったのではないかと思う。しかし、そのような中で仕事を一つひとつコツコツと積み重ねていくことで徐々に世界が開けていき、それぞれの人が今の生活を確立していっている。そのことが、全体を共通して最もメッセージとして伝わってきたように思う。
16名の建築家がそれぞれに書いた文章であるが、どれもある意味淡々としていてドラマチックさを抑えたようなスタイルで書かれており、ある意味、そのような実直な向き合い方が、自立して活動していくために必要なのだろうと感じた。
- 感想投稿日 : 2021年9月30日
- 読了日 : 2021年9月30日
- 本棚登録日 : 2021年9月21日
みんなの感想をみる