一神教の起源:旧約聖書の「神」はどこから来たのか (筑摩選書)

著者 :
  • 筑摩書房 (2013年8月10日発売)
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感想 : 3
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旧約聖書の神の概念がどこから持ち込まれ、育まれたのかを、聖書学による文献としての聖書の精査と考古学の成果などの視点から解き明かそうという本。踏み込んだややこしい議論は避け、初心者的な宗教学の流れや俗説の排除などからフォローしてるし注すらなくて完全に一般向けの雰囲気だけど、とても面白くて夢中になって読んでしまった、というか面白い所だけを見せてもらっている。注とかがっつりつけてもっと専門的に踏み込んだ本書いてほしいと思うけど、この本でもどこが今議論になっているのか、誰がどんな意見で議論しているか、という部分はきちんと書かれているのでありがたい。興味あればぐぐってねという感じなのか。著者の意見と議論の流れがはっきり区別されているのも好印象。ちょうど今月同じようなテーマで訳本を出していらっしゃるのを知って即注文した。

神が「我々」と語る時に著者(編集者)は何を意味しようとしていたのかという話や、イスラエル民族の宗教観を国家ー地域ー家庭のレベルごとに理解していくべきだという議論、倫理的十戒の成立過程など、なるほど!となる話ばかりで、90年代以降の急激に進む議論のうねりの中で新しい聖書とイスラエルの姿が見えてきていることに感動する。もちろん紀元前1000~くらいの話は特にほとんど記録も痕跡も残っていないために「とても説得力のある仮説」以上のものには現状なりえないのだが、それでもかすかに残った痕跡からヤハウェとイスラエルの源流を追い求めるのはロマンがありすぎる。
申命記は話の流れ上かなりクローズアップされているが、この本を通して読むとイスラエルの歴史と文化、著者の意図がはっきり重層的に感じられて違った味わいになり俄然面白いと感じられるようになった。真剣に聖書を読もうと思ったらヘブライ語やらないとだな…道のりは長い。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 学術
感想投稿日 : 2021年2月15日
読了日 : 2021年2月15日
本棚登録日 : 2021年2月15日

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