沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史 上(集英社文庫)

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  • 集英社 (2011年7月20日発売)
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感想 : 27

雑誌「月刊PLAYBOY」に「沖縄コンフィデンシャル」のタイトルで
連載されていた記事が単行本として発行されたのだが、文庫版は
東日本大震災を機に大幅加筆されている。

先の大戦で唯一アメリカ軍との戦闘が行われ、多くの住民が犠牲と
なり、戦後は長くアメリカの占領下に置かれ、本土復帰後もアメリカ
軍の基地を押し付けられている沖縄。

左派文化人が言う「被害者としての沖縄」ではない、もうひつの沖縄
を掘り出すというのが趣旨らしい。

でも、上巻はほとんど沖縄ヤクザのお話だった。映画「仁義なき戦い」
シリーズや実録ヤクザ物は好きなので面白くはあるのだが、凄まじい
抗争やリンチの様子はお腹いっぱい。

沖縄に限らず、敗戦後の日本ではどこでも愚連隊などが跋扈していた
のだから沖縄だけに限った問題でもないと思うのだけどね。それでも
男性器の先端をペンチでねじ切るっていや~ん。途轍もなく痛そう。

興味深かったのは沖縄内での差別の話だ。戦前戦中の本土では
沖縄出身だと言うだけでの差別があったが、沖縄本島でも他の
離党出身者への差別があった。

沖縄に先駆けて日本復帰を果たした鹿児島・奄美群島出資者への
差別も酷かったようだ。就ける職業も限られ、しかも賃金には大きな
格差があった。

差別された者は自分より弱い者に対して更なる差別をするとの連鎖
なのかな。

オリオンビールの創業者や沖縄最大のゼネコンの創業者など、「沖縄
四天王」と呼ばれた経済界の大物や、沖縄県警の辿った軌跡なども
綴られている。

佐野氏のこれまでの著作同様、同じ言い回しの多用はくどいが当事者
や当時を知る人々に多く取材しているのでエピソードはてんこ盛り。

気になったのは沖縄戦を体験した大田昌秀元沖縄県知事へのインタ
ビューのなかで出来たアメリカ軍のことだ。

沖縄本島に上陸したアメリカ軍部隊のなかには沖縄の非戦闘員を救出
する為の兵士がいたらしい。この辺りのことが書かれている作品はない
かなぁ。詳しく知りたい。

上巻後半から沖縄怪人伝のようになっているので下巻が楽しみ。ヤクザ
の話もおおけれど、偉人・怪人はヤクザ以上に魅力的だもの。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年4月11日
読了日 : 2017年4月11日
本棚登録日 : 2017年4月11日

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