古書泥棒という職業の男たち: 20世紀最大の稀覯本盗難事件

  • 原書房 (2016年1月27日発売)
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感想 : 9
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海外のミステリーには古書をテーマにした作品が結構ある。日本で
も近年、女性古書店主が主人公のミステリーのシリーズがヒットした。

出久根達郎氏の手になる古書エッセイをはじめ、本や古本にまつわる
作品は目に付くと手に取って来たが本書はノンフィクションである。

舞台は大恐慌真っただ中のアメリカ。株は大暴落をし、工業生産は
低下し、街には失業者が溢れていた。

それでも金を稼ぐ方法はある。公共図書館が所蔵している稀覯本を
盗み出し、古書店に売り払えはいい。露見したとしても窃盗罪で短
期間の服役でまた娑婆に戻って来られる。

実行犯だけが問題なのではない。古書店主は盗品と知りつつ買い取る
ばかりか、古書店主自らが窃盗団を組織して「稀覯本リスト」を作成し、
どの図書館がどの本を所蔵しているかを実行犯たちに教えているの
だもの。

図書館側もただ手をこまねいていただけではない。盗難防止対策は
立てていた。稀覯本は閉架式書架に収め、閲覧希望者は司書の監視
の下でしか閲覧出来ないなどの方法を考えた。

それでも窃盗犯は巧妙だ。何度も図書館に足を運び、司書を信用させ、
ある日、目当ての本を盗み出す。

蔵書印を消す手口だとか、盗品の販売ルートなど、よくも考えたもの
だなと感心してしまった。

そして、盗まれた本と窃盗犯、その後ろにいる古書店主やディーラー
を追跡する図書館側の特別捜査員の執念も凄い。なかでも窃盗犯
のひとりが捜査員に見込まれて盗品の捜査に協力するばかりか、
後には優秀な捜査員になっていたなんてまるでドラマだ。

私自身、本は読めればいいので初版本などの稀覯本は欲しいと
思わない。でも、世には愛書狂なる人たちがいて、稀覯本収集に
情熱を傾けるばかりに犯罪行為に走るタイプの人もいるようだ。

古書泥棒もそんな人たちの需要を賄うのであろうけれど、図書館の
本ってみんなの財産だもな。盗んだ上に、装丁し直したり、ページを
付け替えたりしては本が死んでしまうではないか。

「万引きは犯罪です」。地元の新刊書店に貼ってある警告のポスター。
稀覯本とは少々異なるけれど、リサイクル書店が買い取り価格なんて
のを公表しているのも、新刊書店から万引きが減らない一因にもなって
いると思うんだよな。

どんなことでも、盗みはいけませんっ!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年8月23日
読了日 : 2016年6月29日
本棚登録日 : 2017年8月23日

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