開発主義の時代へ 1972-2014〈シリーズ 中国近現代史 5〉 (岩波新書)

  • 岩波書店 (2014年8月21日発売)
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感想 : 10

 対象時期の通史。まず、本書では改革開放は1978年の第11期三中全会が発端との立場を取らない。文革中の70年代初からプラント輸入の動きはあった。また78年の三中全会でも、鄧小平は華国鋒との権力闘争に勝ったとは言え、政治路線転換は不徹底だった。
 その後も90年代初まで改革開放をめぐる攻防は続く。この過程で、80年代、鄧小平など長老グループを単なる保守ではなく、市場化と対外開放には基本的に賛成し、行政の効率を高め大衆の意欲を喚起する限り政治改革も必要だとする「独裁重視型の政治改革論者」と位置づける。趙紫陽ら「協商重視型の政治改革論者」とは異なるが、両者とも政治改革論者ではあったということだ。
 90年代は「社会主義の中国的変質」という語で評される。アジア金融危機には各部門内の党組織を強化して統制する、という極めて社会主義的な手法で対処したものの、2000年には「三つの代表」論により、中国共産党は「開発主義とナショナリズムに拠って立つ政党であることが明らかに示された」とある。確かに、改革開放以降の中国は社会主義とも資本主義とも言い難い。「開発主義」という語がよりふさわしいのだろう。
 なお、中国の経済路線を見るにあたり、改革か保守か以外に、中央集権か地方の自主権かという視点もあった。改革開放初期、広東省に自主権を認めるにあたり、太平天国の乱や孫文の革命運動まで挙げて南北の緊張関係を説明している。21世紀に入っても、中央のマクロコントロールと地方経済の活性化の争いが記述されている。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 中国
感想投稿日 : 2020年10月27日
読了日 : 2020年10月27日
本棚登録日 : 2020年10月27日

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