米メディア、特にテレビ局の姿をやや批判的に描く。著者にテレビ局や米政治事務所の勤務経験があるためか裏話や個別の番組といった各論が少なくない。それだけに、一層率直に米の現状を表しているのだろう。
自分を「盛る」ために嘘の武勇伝を語ったアンカーとアンカー神話の崩壊。ジャーナリストから広報職への転身や、政治側のメディア戦略。「パンディット」(実は党派性を持ち商業化された「識者」?)依存。また、政治風刺コメディやリアリティ番組、「主流メディアを相対化する」エスニックメディアまで米メディアの範疇内として扱うのは新鮮だった。
しばしば日本で賞賛される、米での記者クラブの不存在や署名記事。しかし弊害もあり、また政治側からのメディアへの差別・優遇があからさまなのが分かる。メディアの党派性と分極化は日本以上のようにも見える。9.11後は米メディアは愛国一色になったと著者は批判的に指摘してもいる。
一方、米全体ではテレビ離れの傾向だと著者も認める。ネットメディアは本書ではほとんど触れられていない。そのため、本書で取り上げられたメディアがどれだけ実際に米を「動かす」のか、それは本書の範疇外のように感じた。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
米国
- 感想投稿日 : 2020年10月4日
- 読了日 : 2020年10月4日
- 本棚登録日 : 2020年10月4日
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