夏の暑さが終わり秋の涼しさを感じる季節に読みました。なんとも良いタイミングで、風の涼しさや、季節の変わり目に敏感になる感度が、物語に没頭させてくれました。
本書は、一つ一つのエピソードは短編になっているのですが、著者の幼い頃から拝み屋になろうと決心するまで年を追って書かれているため、続けて読むと1人の青年の物語になっている。
ホラー小説としても、私の求めていた世界観だった。
子供の頃のあやふやだけどずっと覚えている不可思議な体験、ただ怖くて泣いた思い出、山などの自然が身近で、読んでいると土から立ち昇る湿気が感じられるような、身近なようで遠い世界。ホラー小説というより、怪異譚、でも良いけどもしれない。
印象に残った情景
初めて恐ろしいものを見た幼い頃の著者が曽祖母に大泣きする。曽祖母は吐き捨てるように「なんとも勘の鋭い子だ」とつぶやいた。 初めから始まりまで
コンビニのアルバイトに転職し、そこで出会った女性に心を開いたころ、2人で異形のものを見る。
自分が見るものは幻覚だと自身を追い詰めていた著者だったが、彼女も同じものを見たことを知り、彼女はお化けだと言った。怖いものは素直に怖いと思えば良いと、著者の心が軽くなった話。 おばけなんかないさ
今までの話に出てくる曽祖母というのは、どの人なんだ? ぞっとするシーン。ここで、著者の幼少期に曽祖母がお前は何を拝んでいるのかわかっているのかと曽祖母が言っていたことを思い出す。 暴かれた影
姓も変わり、名も変わり、進む道も大きく変わった。まるで生きながらの転生だな。 この後、著者はもう今までのようには戻れない、もう普通には暮らせない。と書いているが、著者がはっきりと意思を決めた印象的なシーンで、心が澄み渡っていくような静謐な雰囲気を感じた。 虚しき流れ
- 感想投稿日 : 2020年9月22日
- 読了日 : 2020年9月22日
- 本棚登録日 : 2020年9月22日
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