Aから借りた本。夏のはじまりに借りて、やっと読めた。
これは庄野にとっての最初の長編小説らしい。とすると庄野潤三ははじめから晩年の作品につづく家庭の姿を自分の文学のなかに見ていたことになる。
一家が大阪から越して東京に住みはじめた頃の話で、山の上の家とはまた別の味わいがある。ここには井伏鱒二の甕も、英二おじちゃんのバラもないが、そのぶん庄野がもとめていた家族の原型みたいなものを見ることができる気がする。確立してないからこそ、夫婦の願望やまだ若い心の動きがよく描かれているような。妻がヤドカリを四人分(長男、長女、次男、自分)買ってきて、名前を付けて飼ってるところいいな。ヤドカリはある日、二匹いなくなって物語の最後にはもう二匹もどこかへ逃げている。家族の印象的なエピソードは他にもいくつもあり、いま自分が家族の小説を書いているから、きっと影響されているなと思いながら読んだ。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2021年8月29日
- 読了日 : 2021年8月29日
- 本棚登録日 : 2021年5月5日
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