大阪アースダイバー

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  • 講談社 (2012年10月11日発売)
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「縁(有縁)」と「無縁」という観点から商人の社会とそれ以外の権力社会(大名を頂点にした農耕、封建社会など)をとらえるとスッキリ。大阪に行ったときの違和感のようなものが中沢新一さんのアースダイビングのテクニックで爽快にとき明かされていて目から鱗。想像力で補完されているところが多いから[「アースダイバーの推論」p215など]、魅力的で説得力があっても冷静に読む必要はある。もちろんみんなができるアースダイビングの、中沢さんが大阪にしたらこうですよという一例だ。

個人的には「死(墓地)」と「セックス」が都市のつくりで密接に結びつく縁があることに前作から惹かれ続けている[p128]。理屈で言われ続けてきてはいるが、地図で、また実地で確認できるのはとても強い。アナロジーではないのだ。

今回は墓地に加えて、まさに大阪らしいイメージの「笑い」も実は死者の埋葬のときにおこなわれた「笑の儀式」[p57]に関係するという。なんばグランド花月の場所が墓地や死体を焼く場所に近い[p128]。

また、東西の通りを「デュオニュソス線」と名付ける[p6]ことから始めたり、西洋の概念と積極的に結びつけるのは突飛で滑稽で、別に中沢さんが別の名称を与えればいいのにと思うかもしれないけれど、そこにはやはり意図があるはず(無意識であれ、意識的にであれ)。たとえば、欧米人が読んだときのためとか…。

これは中沢さんのアースダイビングの一例だから、重要なのはこれを参考に私たちもアースダイビングをすることである。おもにそれは地形、地図、そして歴史を参考に(しかしメインはやはり地図をよくみたり、現場を歩くことだろう)個人意識を超えた「集合的無意識」への通路を開く[p294]ことだ。鳥になって。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 人文学
感想投稿日 : 2013年3月28日
読了日 : 2013年3月28日
本棚登録日 : 2013年3月26日

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