[沈思と行動と]明治から大正にかけての社会主義者の頭目として紹介されることが多い堺利彦。社会主義者の「冬の時代」と呼ばれる時代に、糊口を凌ぐため彼が設立した「売文社」という代筆業に注目し、新たな堺の一面を浮かび上がらせるとともに、日本の社会主義・文学運動に与えた影響を解説する作品です。第62回読売文学賞受賞作。著者は、2010年に鬼籍に入られた後に本書が受賞作となった黒岩比佐子。
本書で映し出される堺利彦像は、社会主義者というよりも一人のヒューマニストであり、俗な言葉を使えば良いおじさん。遠大な理想を抱きながらも沈着としており、後進の生活や保護に苦心をした懐の深い人物という印象を受けました。代筆という業を通して、日本の翻訳業などに大きな影響を与えていたこともわかり、社会主義者というベールの裏に埋もれていた堺利彦の新たな面影が本書で明らかにされているのではないでしょうか。
〜堺利彦の事績は脚光を浴びることもなく、讃えられることもなく、人々の記憶から消えて、文字通り「棄石埋草」となった。それは堺が自ら望んだ生きかただった。〜
一歩下がった生き方が良い☆5つ
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- 感想投稿日 : 2018年1月17日
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- 本棚登録日 : 2018年1月17日
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