([お]4-3)ピエタ (ポプラ文庫 日本文学)

著者 :
  • ポプラ社 (2014年2月5日発売)
3.76
  • (80)
  • (165)
  • (104)
  • (24)
  • (7)
本棚登録 : 1722
感想 : 146
4

18世紀の作曲家ヴィヴァルディと、彼を慕う何人かの女性たちを巡る物語。

ヴィヴァルディの死から物語が始まるのだけれど、感傷や感慨に浸るのではなくて、
むしろそれをきっかけにして、主人公の世界が広がっていく感覚が心地よかった。
失われた幻の楽譜を探すうちに彼女がどんどん積極的になって、行動的になって、
気付けば彼女は晴れた空の下、ヴェネチアの河に浮かぶゴンドラに乗り、穏やかな波に揺られ、
昔話を語り合える友と一緒に歌を口遊んでいた。
まるで死んでしまった作曲家が彼女を連れ出して導いたみたいに。

物語の傍らにはいつもヴィヴァルディの音楽が流れていて、ゴンドラを運ぶ水の音が聞こえていた。そして「ピエタの娘たち」の話し声も。
「音」が「空気の振動」であるのならば、彼が作った音楽も、彼女たちが息をしたその空気も、きっと今でも、私たちのすぐ近くにあるはずだ。
とても暖かい小説だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2014年2月24日
読了日 : 2014年2月24日
本棚登録日 : 2014年2月24日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする