歴史教育というのは教科書問題などにおいでも大きな論点になってきた部分ですが、この本を読んで単に教科書にあるがままの真実や南京大虐殺などについて載ればそれで解決、というわけではないということを改めて感じました。
今は戦争は学校教育よりもゲームや漫画、歴史小説などサブカルの方が若者に影響を与えているため、リアルな戦争への想像力が失われてきている。
教育する側の人間自身が既に戦争体験世代ではなくいわば人から聞いた実感なき戦争を、ただ伝えているという状況も原因の一つだし、また昨今では教師一人当たりが抱える仕事量が多すぎて単に余裕がなかったり思想教育と勘違いされることへの恐怖から戦争をさらっとしか扱わなかったりすることもそうだろう。
後は社会全体を覆う閉塞的な空気が学生たちに無気力を生み、深く考える力を奪ってしまった。(たとえば戦争だったんだから色々あったのは仕方ない、など)
様々な要因があるが、とにかく戦争体験者が社会からいなくなっていくこれから、歴史教育は難しくなっていくのであり、その中で教師はメディアが及ぼす影響を踏まえつつ、歴史教育を歴史研究と歴史叙述と三位一体化させ、生徒に過去の延長線上に自分があるということを認識させることが重要である、とまとめられて本書は終わっている。
戦争から得た平和を求める価値観や文化を失わないために、またアジア諸国の人々と手をつなぐために、歴史教育はかなり重要な役割を担うだろう。
そして歴史教育を効果的に行うためにはもちろん生徒を引かせないような様々な工夫を盛り込んだ教育をしなければならないが、メディアのあり方や子どもたちの学習欲・知的好奇心が育つような健全な社会作りをしていかなければならないと思う。
- 感想投稿日 : 2010年4月9日
- 読了日 : 2009年1月24日
- 本棚登録日 : 2009年1月24日
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