この分野は、自分は全くの素人。読み物としておもしろく読んだ。
ソ連時代のがちがちの相手との交渉、ゴルバチョフのすこしゆるんだ状況、エリツィンのかなり踏み込んだ交渉、プーチンの最初のころの多少柔軟性のある交渉、そして、今のまったく2島返還の可能性さえなくなった状況が、物語のようによく分かる。
自分は、同じ役人として、強く印象を受けた点。
(1)東郷氏は、高い地位から、固いソ連、ロシアとの交渉を踏まえ、四島一括返還から、最初に2島の返還を決めて、最終的に4島全部を返還するという妥協案をもって、交渉をあたり、もっといろいろなパッケージで経済的に苦しんでいたロシアを応援しつつ、交渉の窓をこじ開けていった。
このようなリスクをとる行為に対して、四島一括返還という建前論をいって自分は安全地帯にいて、東郷氏の足をひっぱった役人がいることについて、やはり恥ずかしいと思う。それがいまや、まったく四島とも返還の可能性のない状況に落ち込ませたこと。
リスクをとらない役人は本当に困りもの、邪魔者。
(2)政治家との関係、大臣などとの関係については、国益を守る、実現するという観点から役人は圧倒的な知識量と経験をもってその説得と理解を求める。そして最終的には大臣の指示に従う。そういう努力が必要だと思う。
なんか変なこと言っているな、特定の情報源に引っ張られているなと思いながら、きちんと政治家に進言しない役人が多い。それはその役人が勉強不足、経験不足だからだと思う。理屈と事実で説明する、そのために勉強をいろいろ税金でさせてもらっている。
自分も含め、国益、国民の利益のために、きちんと政治家に説明できる能力と経験をもっと積みたいと思う。
- 感想投稿日 : 2012年7月9日
- 読了日 : 2012年7月9日
- 本棚登録日 : 2012年7月9日
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