子どもの頃から哲学者 ~世界一おもしろい、哲学を使った「絶望からの脱出」!

著者 :
  • 大和書房 (2016年5月25日発売)
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感想 : 31
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積読をふと手に取って一気に読んでしまった。もの凄く面白い。ほぼ同世代で哲学に惹かれおまけに双極性なのもあって、とても親近感を覚える。と同時に、自分が哲学者になれなかった理由を面と向かって突きつけられた気もする。
それはこういうことだ。「つまり僕は、ある意味では自分の「人類愛」思想の正しさを確認するためだけに、哲学の本を読み続けていたのだ。今の僕からすれば、それは最悪の読み方だ。自分の信念に都合のいいように、哲学書を勝手に解釈しながら読む。それは哲学書の読み方として、一番やってはいけないことだ。」「古代から近代、そして現代へと、歴史の風雪に耐えた哲学書を読み込んでいくと、これら専門用語の意味と、その登場の理由や必然性などがよく分かってくるようになる。そしてその過程で、勝手なイメージを乗せて考えていた、自分のそもそもの“思想“の浅さにも思いいたるようになる。」僕に欠けていたのは、自分の信念を崩壊させる哲学史の洗礼であり、もっと言えば師匠との出会いだ。著者にとっての竹田青嗣のような。
鬼界さんは決して哲学史をやれとは言わなかった、とにかく考え続けろという指導だった。廣瀬さんは教え子に徒弟修行を強いるタイプではなかった。竹田青嗣の指導方法が唯一絶対ではないが、修論を書き終えて僕は自分の判断としてこれを職業にするなら哲学史をやらなければと強く思った。しかし、本当にやるべきことは、著者のように(翻訳とはいえ)原典を大量に通読することだった。
哲学史が必要だけど、興味はなかった。だって真理は自分の手の中にあったから。今となって思えば、だからこそ哲学の連綿たる蓄積に打ちのめされる必要があった訳だけれども、当時は職業哲学者の嗜みとして哲学史のお勉強をしなければという認識だった。そして、図書館から借りた哲学史の本に埋もれた夢枕に鬼界さんが立ってこう言った、「君本当にそんなことやりたいの?」これで僕は哲学者になるのをスパッと諦めた。だって哲学史になんて全然興味ないんだもの。
そうして僕は法律家になった。向いてないと思いつつ15年くらい実務をやってきた。今も哲学だけやれたら幸せだろうなとは夢想する。でも、僕は哲学者にはなれないだろうと思う。そう思うと今でも血が流れるくらい辛いのだけど。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2023年3月22日
読了日 : 2023年3月22日
本棚登録日 : 2023年3月22日

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