オリバー・ストーン オン プーチン (文春e-book)

制作 : 鈴木宗男・解説 
  • 文藝春秋 (2018年1月12日発売)
4.14
  • (3)
  • (2)
  • (2)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 37
感想 : 6
5

いやぁ、面白かったね。わりと分厚い本だから読めるかなぁと思ったけど、最後まで引き込まれて読み耽ってしまった。オリバー・ストーンがプーチンに行ったインタビュー集だ。

 プーチンといえば、今じゃヒトラーと並べられるくらいの悪役としてとらえられる向きもあるだろう。本書とドキュメンタリーが出たのは2018年。まだウクライナの戦争は始まっていないが、クリミア併合後ではある。プーチンといえば、もともとベビーフェイスではないだろうが、すでにヒールとしての立ち位置は確固たるものがあったはずだ。その時代に、ここまで突っ込んで話しするんだぁというのは、興味深い。

 もちろんプーチン、ロシア側としてはプロパガンダ的な側面はあるのだろうけど、それを織り込んだうえでも、ロシアからの視点というのは違う世界を見せてくれる気がした。

 オリバー・ストーンといえば、もともとアメリカ合衆国に対して、厳しい見方をするイメージはある。プーチンがオリバー・ストーンに対して、

「一つ約束しようじゃないか。あなたがアメリカの政策に対して非常に批判的なのはわかっている。ただ私を反アメリカ主義に引きずり込むのはやめてほしい」

というあたり、クスっと笑ってしまう。でも、プーチンにしてみれば、外交問題だ。同じ視点に乗っかることはできないだろう。

それに対して、少し時間をおいてからオリバー・ストーンは答える。

「あなたは二度、私を反アメリカ的だと言い、自分をそこに引きずり込まないでほしいと言った。それについて説明しておきたいんだ。私は母国を愛している。アメリカを愛している。そこで育ったのだから。母親との関係と同じだ。ときには意見が合わないこともあるが、それでも母親を愛している。ときに愛し、ときに憎む。それは母国も同じだ。母国と意見が合わないこともある。」

 プーチンはいう。
「いいかい、あなたが自由に母国の指導者の行動を評価できること、そうする権利があるのは、アメリカ人だからだ。厳しい批判をすることだって許される。一方、われわれはあなたの国とだけでなく、政府とのパートナー関係を構築していいようとしている。だから身長にふるまう必要があるんだ。」

 このあたりから垣間見られるのは、厳しい政治、社会情勢を生き抜く大人の会話だ。

 どこぞの国のように適当に思いついたことをくっちゃべって、怒られたら、

「真意が伝わらなかったのなら残念」
とか、
「誤解を与えたなら、謝る」
とかいう国の指導者とは、成熟の度合いがちがう。

 厳しい世界を生き抜いてきたからこそ、言葉に重みがあるように思う。

「重要なのはどれだけ権力を握っているかではない。手にした権力を正しく使うかどうかだ。権力がないから何かができないと言うのは、もともと権力など使う能力のない人間だ。それなのにもっと権力が必要だと言う。そして自分より権力がある者を見て、自分たちには足りないと考える。だが単にその効果的な使い方を知らないだけだ」

 日本についての発言もあった。すこしね。

「たとえば日本。日本人は自分たちが外から敬意を払われているのか、いないのかという外的サインにきわめて敏感だ。名誉を重んじる、きわめて自尊心の高い国家だ。  これははっきり言っておくが、常に圧力にさらされているという感覚は、誰にとっても好ましいものではない。遅かれ早かれ、何らかの影響が出てくるだろう。それはまちがいない。」

 最後の方でイラク問題について語っている場面。

「そもそも地政学的問題であろうと経済問題であろうと、武力で解決するのはまちがっている。その国の経済を破壊してしまうからだ」

 そう言っていたプーチンがウクライナとの現状について、どのように答えるのか聞いてみたい気はするね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年4月16日
読了日 : 2023年4月16日
本棚登録日 : 2023年4月16日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする