ユーロ――危機の中の統一通貨 (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店 (2010年11月20日発売)
3.68
  • (7)
  • (22)
  • (15)
  • (2)
  • (1)
本棚登録 : 189
感想 : 22
4

ユーロ危機が叫ばれている。大学のゼミが欧州政治であった為、復習のつもりで読んだ。
氏の見解(2010年著なので少し古いが)は、「ユーロは崩壊しない」という結論。
通貨統合のもたらした意義と背景を丁寧に説明されているが、特に1990年以降急速に発展した金融経済(マネー経済)から欧州経済を守った意義が大きい。確かに、1992年のEMS当時の投機筋による欧州通貨危機と、それに続いたアジア通貨危機は、ユーロ発足を政治的な観点からも大きく前進させた。
しかし、ユーロ発足後の欧州経済の発展は、当初の「シナリオ外」の好循環、つまりバブルであった。(財務的にわりと危なく、国債の金利が高かった国が、ユーロ発足後信用度が高まり国債金利が切り下げられ、資金が流入してバブルになった)ギリシャは粉飾を続けていた。欧州経済安定のために、欧州各国が支払った資金は5500億ユーロ(IMFは2000億ユーロを出資)ギリシャに続いて他の国も危なくなったら、独・仏などの国民の怒りは計り知れない。
氏は、ドイツにとってユーロを手放すことは逆に損になるとしている。その理由は、マルクが高くなり製造業が大きなダメージを受けるというが、それは本質からずれて詭弁であるように思う。
それでも、やはりユーロは崩壊しないだろう。少なくとも欧州内部から自壊することを必死に独、仏は食い止めると思う。
ユーロは多くの欧州国民にとって前進/進歩の証であり、それを手放すことが改革と考える人は少ないのではないか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2012年2月17日
読了日 : 2012年2月14日
本棚登録日 : 2012年2月17日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする