鳥籠荘の今日も眠たい住人たち〈1〉 (電撃文庫)

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  • メディアワークス (2006年11月10日発売)
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感想 : 126

文明開化の雰囲気ただよう鳥篭荘ことホテルウィリアムチャイルズバードというアパートを舞台にした連作集。
ヌードモデルをつとめる天涯孤独の十七歳・キズナ(ひきこもり気味)の視点で話が進みます。壁井ユカコさんは文章が上手いと聞いてたんですが、本当に上手いです。読点少なめで割りとセンテンスが長い文体なんですが、心理描写が繊細で、描写もすごく丁寧で好感もてます。

永遠に泥沼に浸かってはいられない。
湖に水が溜まるみたいに、いつかは泥は浄化されて澄んだ水で埋められていく。
時間という決して澱まない水が少しずつ泥を薄めて、はまり込んだ足をいつかは解放する。
たとえ浅井自身がそれを望んではいなくても。

この部分は「上手いことたとえるなあ」と溜め息がでました。感嘆。
キャラ造形も上手い。睡眠障害の画家、きぐるみのパパをもつゴスロリ小学生、女装癖のある学生。屋内に突如響く金切り声や幽霊に「掃除人」など、人外の住人も含めたら結構な大所帯です。
舞台はおそらく日本なんですが、アメリカの下町といわれても不思議と納得してしまう無国籍風の空気が、現実から3センチほど浮いてるような独特の読み心地を約束します。
テクノサマタさんの挿絵も雰囲気にあっていてとても可愛らしい!
浅井とキズナの煮え切らないやりとりにやきもきしたり、掃除人の思い込みの激しさに笑ったり(色ごとってなんだよ色ごとって)、女装だけど男前な由起にどきっとしたり……
日常の延長線上に非日常があるのではなく、日常の中に非日常が組み込まれて境が曖昧になってる感じですね。

若い女性に人気があるのが凄くよくわかります。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年8月24日
読了日 : 2017年8月24日
本棚登録日 : 2017年8月24日

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