YouTubeの映画当たり屋さんが映画を酷評&原作を絶賛してたので気になり購入。犬養シリーズの1冊らしいがこれのみでも読める。
中山七里は他に「ヒポクラテスの憂鬱」「魔女は甦る」のみ読了。

安楽死の是非を問うテーマ自体は面白いし、己の信念にとって依頼者を安楽死させるドクター・デスを追跡する本筋も面白く、そこに模倣犯も絡んで二重、三重にサイドストーリーが展開していくのが面白い。

最初の明日香と友人の軽妙な会話など、重くなりがちなテーマに軽妙なユーモアを交えてテンポ良く運ぶ職人芸は見事。

主人公の犬養も刑事の苛烈さと父親としての弱さを併せ持った、魅力的な人物として描けている。

登場人物の中では麻生が人間臭くて好きだ。「不器用」「器用」の評価の繋げ方にはやられた。

しかし不満もある。
被害者の身内が落ちるシーンで、「ぐわわっ、ぐわわあっ」と泣かせる事はなかったんじゃないかとか。

48歳主婦の聡子のハンドルネームが「クレバーチャイルド」(=聡い子)って……とか。

この手の違和感が至る所でひっかかって、筋自体は面白いのに「えっ」と冷める(腐女子ネタには笑ったけど)

安楽死や終末医療の法制度、化学薬品の構造過程など、資料をそのまま抜き書きしてないか……みたいな、エンタメに落とし込めてない生硬さも気になった。

2020年11月16日

読書状況 読み終わった [2020年11月16日]

新八の「ぺっ」で死ぬほど笑った、SNSでの使い勝手すごいよさそう。今度の死刑囚ネタは切り裂きジャックか。肺活量が人類を超越した海賊王もすごい。家永の死亡エピソードは他の死刑囚と比べ雑というかあっさりしすぎでは?あそこまでカニバルな異常者として描いたなら取って付けたような可哀想な過去はいらなかった、母親絡みのトラウマ前ふりもなかったんでひっかかる。第七師団怖い、マジでヤンデレサイコパスしかいない。鯉登が唯一の良心に見えてくる。シマエナガ回の杉元もサイコパスいや仕方ない状況だけどさ。師匠呼びをやめない白石律義

2020年10月14日

読書状況 読み終わった [2020年10月14日]

新八の「ぺっ」で死ぬほど笑った、SNSでの使い勝手すごいよさそう。今度の死刑囚ネタは切り裂きジャックか。肺活量が人類を超越した海賊王もすごい。家永の死亡エピソードは他の死刑囚と比べ雑というかあっさりしすぎでは?あそこまでカニバルな異常者として描いたなら取って付けたような可哀想な過去はいらなかった、母親絡みのトラウマ前ふりもなかったんでひっかかる。第七師団怖い、マジでヤンデレサイコパスしかいない。鯉登が唯一の良心に見えてくる。シマエナガ回の杉元もサイコパスいや仕方ない状況だけどさ。師匠呼びをやめない白石律義

2020年10月14日

読書状況 読み終わった [2020年10月14日]

結論。とてもエロかった。エロいだけじゃなく面白い。攻めと受けのキャラがいい。というかどちらもゲスい。あくどい。計算高い。BLは攻めと受けが対等で、いっそ調子のりくさった攻めの裏をかいて手玉にとる位したたかで図太い受けが好き!!って人には声を大にして勧めたい。ゴシップカメラマンが尾行中の人気俳優に監禁され、先輩の恨みでリベンジポルノを撮られる話……というとありがちなのだが、ちょっとしたセリフ回しが面白くてツボる。受けの杉村がニップルサッカー(っていう名称なんだ、初めて知った。調べに行っちゃったじゃないか)を初めて見て「調理器具?」と素ボケをかますのだが、次のページで乳首に被せられ「乳首が料理された……!」と恥じるのだ。何この素晴らしい流れ。天才か。杉村は決してやられっぱなしの可哀想なキャラじゃなくて、猫かぶり俳優の椎名に指サックで尻をほじくられ「おっ勃ってんじゃん、こーゆーの好きなの」とかよくある卑猥な言葉責めされても、「そりゃ男が前立腺責められたら勃ちますし……」としれっと返す。状況は鬼畜シビアなのに、鬼畜に責められる受けがちょっとズレてるせいでしみじみととぼけたおかしみを生む。でもエロい。とてもエロい。特に乳首責めに対する作者の執念がヤバい。色んな道具や玩具、拘束具を用いていじめられるのでSM好きな読者なら満足するし、調教されてトロっトロになった杉村のエッチな表情には椎名と一緒にぞくぞくする。そして忘れちゃならないのだが、この漫画攻めもエロかわいい。なんならリバでもいい、リバが見たいと悶えるレベルでそそる。
「女にモテたい」と不純な動機で芸能界入りし、部屋には大人の玩具をしこたま揃えてる人気俳優・椎名(萌え袖があざと可愛い眼鏡っ子)だが、復讐目的で連れ込んだ杉村のトロ顔に何故か本気でムラムラしてしまい、最終的には「どんな女とヤるより気持ちよかった……」とドツボに嵌まる。コイツのオンオフ切り替えがすごくて、表の顔は愛され小動物系好青年で売ってるのに、杉村と2人きりだとSっけ全開の加虐欲のかたまりとなる。そのくせ「俺が男に、あんな冴えないのに惹かれてるなんて」と悶々と悪あがきし、続編冒頭では杉村に連絡をとるだけで悩んで悩んで悩みまくるギャップ萌えがエグい。杉村と椎名は色々あって互いに手を組むのだが、利害が一致する共犯にしてバディなSMセフレメイトの今後が楽しみすぎる。

2020年9月23日

読書状況 読み終わった [2020年9月23日]

ダンピアと愉快な私掠船の海賊たちがゴールデンカムイさながらのB級グルメ紀行をくり広げる海洋冒険もの。絵柄は山本ルンルンとかカートゥ―ンぽいが、歴史的な考証がしっかりしてて知的好奇心が刺激される。トドの油食いたい。ぱくぱく読んでしまう焼きマシュマロのような漫画。

2020年9月10日

読書状況 読み終わった [2020年9月10日]

「バキ」「オメガトライブ」好きな自分にはストライク。世界観がとち狂ってる上にキャラクターがイカレまくってて楽しい。容赦ないバイオレンス描写や特殊能力バトルもあるがこの異様にかっとんだテンションに慣れるとだんだん快感になる。絵は癖が強くて人が選ぶが、この粗削りな勢いが独特の熱量を生み出している。壊爺かっこいー。

2020年9月10日

読書状況 読み終わった [2020年9月10日]

SNS一人称視点のどんでん返しミステリー。
「アンフレンデッド」のサスペンス版とでもいおうか、あちらはティーン主役だがこちらは妻に先立たれ高校生の一人娘を育てる中年の父親視点。
冒頭YouTubeの子育てチャンネルのような妻子との愛情詰まった思い出動画が再生されるのでわけがわからず面食らうが、登山で具合を崩した母親の入院中の動画が挟まれるあたりから雲行きが怪しくなる。
話はよくある「子供の失踪の謎を追ううちに衝撃的な素顔を知って……」というものだが、終始パソコン画面上で展開するので臨場感がある。
LINE会話やメール会話もリアルタイムで進行していくが、更新が早いうえに全て英語なので追うのが大変。これはもうフィーリングで「はんはんふーんなるほどそういうことね」とわかった気になるしかないしそれで問題はない。アメリカ人なら自然に頭に入ってくるだろうけど、LINE会話にも字幕が欲しかった……。

どんでん返しが強調されているが、ものすごいひねた人ならまあわかるかな……?という感じ。犯人が存在するミステリーなら物語の1/3段階で候補が出尽くすとして、それだと該当者が弟しかいない。が、本作はそこからもう二転三転する。
リモート会話中にしばしば不自然に入ってくる息子に目が行くならコイツ(ら)なんか怪しいと勘付くかも。
それ以前の段階で、近所中から大金奪い取った息子の詐欺行為を「募金は本当ですと言って回った」なんていい話風にまとめる捜査官と、それに「あなたが担当でよかった」と言っちゃう父親にひっかかったら早く気付く。
この捜査官が息子と一緒に一軒一軒真実話して謝れる母親だったらこんな事件起きなかったのに。
そういう意味では毒親ものでもある。

基本SNS上でストーリーが進行していくのだが、友人が多く人気者だと思ってた娘がコミュ障陰キャぼっちで、学校のランチでも孤立してたと父親が思い知らされるくだりが辛い。
リア充のランチの背景にぼっち飯が映りこむってどんな罰ゲーム。しかもそれを父親に見られる羞恥プレイ。
私も友達がおらず1人で食べているが、リア充がぱしゃぱしゃやってる写メの背景に知らず紛れ込んで個体識別までされるのかとぞっとした。ある意味本作において一番のホラー。

SNSのフォローフォロワー数は、まあリアルな高校生ならこの位かな……って範囲だが、行方を尋ねた一人一人の反応がまた辛い。「頭がよかったから勉強会に呼んだけど別に友達じゃなかった」とほざいてた娘が、マーゴット死亡ニュースが流れたあと、SNSで追悼メッセージあげていいね稼いでるのは反吐が出た。
葬式の時たぶんこの子がいたけど、父親に無視されてて「ざまあ」となった。
ユーキャストは知らなかったが、アメリカで流行ってるならツイッターやタンブラーよろしく日本にも導入されて流行るんだろうな。一瞬で退室する通りすがりが結構いて、SNSぼっち(フォロワー数一桁~二桁)にはしんどい仕様……。
あとアメリカ人てタンブラーこうやって使うんだー、へー、と日本のユーザーの性質の違いが面白かった。見るジャンルが偏ってるせいで、タンブラーといえばイラストレーターがポートフォリオ代用するものと思い込んでいた。

他、自分が知らない間にフリー素材化されてるモデルなどネットあるあるで怖い。というか、死亡ニュースが流れた直後に案内メールを送り付ける葬儀社はどうなんだ。あんな不謹慎で失礼なの本当にいるのか。

この話で一番の被害者は犯人に仕立てられて殺された元犯罪者のオッサン。完全に無関係でとばっちりじゃないか……
ポケモンをネタにした会話もリアルだし、その回答でマーゴットの孤独と哀しみが伝わってくるのも上手い演出。
ただ最後のどんでん返しは、ちょっと上手く行き過ぎた感。いや、ハッピー...

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2020年9月7日

読書状況 観終わった [2020年9月7日]

SNS一人称視点のどんでん返しミステリー。
「アンフレンデッド」のサスペンス版とでもいおうか、あちらはティーン主役だがこちらは妻に先立たれ高校生の一人娘を育てる中年の父親視点。
冒頭YouTubeの子育てチャンネルのような妻子との愛情詰まった思い出動画が再生されるのでわけがわからず面食らうが、登山で具合を崩した母親の入院中の動画が挟まれるあたりから雲行きが怪しくなる。
話はよくある「子供の失踪の謎を追ううちに衝撃的な素顔を知って……」というものだが、終始パソコン画面上で展開するので臨場感がある。
LINE会話やメール会話もリアルタイムで進行していくが、更新が早いうえに全て英語なので追うのが大変。これはもうフィーリングで「はんはんふーんなるほどそういうことね」とわかった気になるしかないしそれで問題はない。アメリカ人なら自然に頭に入ってくるだろうけど、LINE会話にも字幕が欲しかった……。

どんでん返しが強調されているが、ものすごいひねた人ならまあわかるかな……?という感じ。犯人が存在するミステリーなら物語の1/3段階で候補が出尽くすとして、それだと該当者が弟しかいない。が、本作はそこからもう二転三転する。
リモート会話中にしばしば不自然に入ってくる息子に目が行くならコイツ(ら)なんか怪しいと勘付くかも。
それ以前の段階で、近所中から大金奪い取った息子の詐欺行為を「募金は本当ですと言って回った」なんていい話風にまとめる捜査官と、それに「あなたが担当でよかった」と言っちゃう父親にひっかかったら早く気付く。
この捜査官が息子と一緒に一軒一軒真実話して謝れる母親だったらこんな事件起きなかったのに。
そういう意味では毒親ものでもある。

基本SNS上でストーリーが進行していくのだが、友人が多く人気者だと思ってた娘がコミュ障陰キャぼっちで、学校のランチでも孤立してたと父親が思い知らされるくだりが辛い。
リア充のランチの背景にぼっち飯が映りこむってどんな罰ゲーム。しかもそれを父親に見られる羞恥プレイ。
私も友達がおらず1人で食べているが、リア充がぱしゃぱしゃやってる写メの背景に知らず紛れ込んで個体識別までされるのかとぞっとした。ある意味本作において一番のホラー。

SNSのフォローフォロワー数は、まあリアルな高校生ならこの位かな……って範囲だが、行方を尋ねた一人一人の反応がまた辛い。「頭がよかったから勉強会に呼んだけど別に友達じゃなかった」とほざいてた娘が、マーゴット死亡ニュースが流れたあと、SNSで追悼メッセージあげていいね稼いでるのは反吐が出た。
葬式の時たぶんこの子がいたけど、父親に無視されてて「ざまあ」となった。
ユーキャストは知らなかったが、アメリカで流行ってるならツイッターやタンブラーよろしく日本にも導入されて流行るんだろうな。一瞬で退室する通りすがりが結構いて、SNSぼっち(フォロワー数一桁~二桁)にはしんどい仕様……。
あとアメリカ人てタンブラーこうやって使うんだー、へー、と日本のユーザーの性質の違いが面白かった。見るジャンルが偏ってるせいで、タンブラーといえばイラストレーターがポートフォリオ代用するものと思い込んでいた。

他、自分が知らない間にフリー素材化されてるモデルなどネットあるあるで怖い。というか、死亡ニュースが流れた直後に案内メールを送り付ける葬儀社はどうなんだ。あんな不謹慎で失礼なの本当にいるのか。

この話で一番の被害者は犯人に仕立てられて殺された元犯罪者のオッサン。完全に無関係でとばっちりじゃないか……
ポケモンをネタにした会話もリアルだし、その回答でマーゴットの孤独と哀しみが伝わってくるのも上手い演出。
ただ最後のどんでん返しは、ちょっと上手く行き過ぎた感。いや、ハッピー...

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2020年9月7日

読書状況 読み終わった [2020年9月7日]

「僕も子供の頃同じ遊びをした。僕の二世も同じ遊びをはじめたようだ。僕の三世もきっとやるだろう」

これは本書に出てくるお父さんの言葉だ。
耳が不自由な彼は徴兵検査でハネられたらしく出征していない。下町で散髪屋を営み、妻と4人の子供に恵まれる。

冒頭の言葉は、彼が潮遊びで魚を捕まえようとする息子たちを撮影した写真の隣に書かれていた。

原爆で全滅した一家のアルバムにあった写真を掲載した絵本である。
しかし悲惨な写真は一枚もなく、飼っている猫や犬と戯れる子供たちや肌着姿で寝転がり勉強する息子、店のガラス戸にチョークで悪戯描きするおかっぱの女の子の写真などが収録されている。
戦時下の普通の家族の日常、と言ってしまえば少し語弊があるかもしれない。何故ならこの一家は当時としては経済的に恵まれている。子供たちは皆元気そうで、赤ちゃんもまるまる太って可愛らしい。
疎開先で飢えていた子供や戦時下の貧困に苦しんだ人々の日常も日常として在る以上、現代を生きる私たちは戦時下の普通を定義できない。私達は戦時下の普通など知らないのだ。

でも、この人たちが幸せだったことはわかる。
どんなに文章を尽くすより、1枚の写真が物語ってしまうことも世の中にはある。

事件や事故の被害者に対し個人をよく知らない私達はただただ漠然と可哀想という感想しか持てない。
大量死が日常の戦争なら特に、一括りの犠牲者としか認識できなくなる。
本当に辛いのはその人が何を好み、何を嫌い、何を哀しみ、何に怒り、何をして生きたか知った時じゃなかろうか。

浦沢直樹の「MONSTER」という漫画の、元殺し屋の話が印象に残っている。
彼は凄腕の殺し屋だったが、ある日標的が自分と同じくコーヒーに角砂糖を三個入れているのを見て以来仕事ができなくなって引退を決めた。
それまではただの標的でしかなかった人物が自分と同じ少し変わった嗜好を備え、自分と同じく角砂糖を3個入れたコーヒーを美味しいと思うこちら側の1人、もっと言えば自分の同類だと痛感してしまったからだ。
殺し屋はきっと、今ここで標的を殺したら角砂糖3個入りのコーヒーを美味しいと思う人間が世界に自分しかいなくなってしまうかもしれないと思ったのだ。

自分と同じ本を読んで泣いた。自分と同じ色が好きだった。自分と同じアーティストの歌が好きだった。
たったそれだけで、もうその他人を「自分と関係ないどこかの誰か」と切り離せなくなる。

犬か猫かよくわからない愛くるしい毛玉を抱えた男の子の写真に「これは犬である」と注釈をつけるおちゃめなお父さん。
お母さんの手編みの帽子を被った愛くるしい赤ちゃん。ガラス戸にチョークで悪戯描きする女の子。

犠牲者だけど、それだけじゃない。それだけにしてはいけない。もし私が彼らだったら(この想像もなかなかに困難だが)原爆の犠牲者とだけしか記憶してほしいとは決して思わない。
それより名前を覚えてもらったほうがずっと嬉しい。
猫と一緒に扇風機の送風を浴びるのが好きだったとか、そういうどうでもいいことこそ覚えていてほしい。

正直読むのが辛かった。ヒロシマの話、きえた家族という表題、読む前から結末はわかっていたけど、一家の写真があんまり幸せそうでやりきれなかった。
小さい子供や可愛い犬猫との日々を面白おかしく綴ったYouTubeの家族チャンネルがある日突然更新停止し、「〇〇たちは事故で皆死にました」と親族の人が動画で報告するような、たとえるならばそんな種類の身近な衝撃を受ける。

特に辛いのはお母さんの辿った結末だ。
はじけるような笑顔の写真の隣に記された、「家族が皆いなくなったことをさとった彼女は、井戸に身を投げて命をたった」。
その前の赤ん坊を産湯に浸からせる...

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2020年9月2日

読書状況 読み終わった [2020年9月2日]

2012年に連載スタートしたのでもう8年が経っている。絵柄もちょっと変わった。昔は粗くて線もぐにゃぐにゃしてたのが少し丁寧になった気がする。
他のレビュアーも指摘してたが、五巻ともなると主人公はほぼ神林といっていい。本の蘊蓄や感想でワイワイ盛り上がるのと同じ位エモ百合成分多め。遠藤と神林は似たもの同士だからこそ、磁極の同極が反発するのと同じ理由で微妙に距離をおいてしまうのか?一度同じ本にハマればとことん熱くて深い議論ができそうだが。
本好きあるあるは健在で、今巻はとくに「本の上巻貸した時の一番嬉しいリアクションは下巻ある?だ」に大納得。

「後で恥かくとか気にしてたら誰かが評価したものしか評価できない人間になるぞ」もぐっさり刺さる。
「たまにTwitterとかでバズってる深いようでよく考えたら普通のこと言ってるだけのちょっといい話風の文章」など、風刺といおうか諧謔といおうか、身も蓋もないが故にその通りで笑ってしまった。
自分はちょうどダレンシャンとハリポタが流行ってた世代なので、ハリポタVSダレンシャンは楽しかった(ちなみにダレンシャン派)

それにしても四人が集う学校の図書室デカいな……座って読む用の椅子なんて私の学校にはなかったが、今はフツーなのか?

基本的にエッセイの延長の日常漫画で、登場人物も四人だけの小さなサークルに終始するので、ドラマチックな変化を求める読者には向かない。
そういう作品に疲れてしまった人は、このユルくてヌルい雰囲気に癒しを求めにきたくなる。

それぞれジャンルの違う本好きがだべっているのを愛でる、または自分もそこにいるかのような一体感を共有したい人に勧めたい。

2020年5月7日

読書状況 読み終わった [2020年5月7日]

いじめ自殺した女子高生の怨霊がインターネットに憑依し、いじめっ子たちに復讐していくホラー。
ストーリーが全て画面上で進行していくので一人称視点のライブ感を味わえる……が、見難い。おまけに画像が粗く、特に男性陣の見分けが付かない。どっちがアダムでミッチ??いや、さすがにケンは体格でわかるけど。もっと言えばビジュアルだけならコイツが一番いじめられっ子ぽいけど。
女性陣もローラとヴァル、まれにブレアがごっちゃになる。ジャスは金髪なのでわかりやすいが、あとはみんなダーク系の茶髪。
冒頭、配給会社のロゴがバグるのはびっくり。故障なのか演出なのか……人物相関図をろくに把握できないまま進行するので軽く混乱。スカイプユーザーならお馴染みの画面や用語が飛びだすのも面白い。

肝心の内容はというと微妙。
というのも、主人公たちの誰一人として好感を持てない。同情の余地のないクズぞろいだ。
動画のコメント欄での中傷は過ちとして流せても、ドラッグレイプで堕胎させたヤツ、死人の墓にイタズラしたヤツとおいそれはあかんだろさすがに。アメリカのちょっとリア充な高校生ってあんな荒んでるの?プロフィール写真から既に自己主張強すぎて引く。個人情報に対するリテラシーとかプライバシーの概念ないのか、って突っ込みたくなるほど顔や部屋を露出しまくり。
向こうの若い子にとってSNSは友人知人との交流ツールで、匿名性はどうでもいいんだな……と日本人との国民性の違いを思い知らされる。いや、日本でもTwitterで顔出し炎上→特定されるのはいるけど。
クズならクズでいっそいじめられっ子側に感情移入し、憎いいじめっ子たちを虐殺していくデストラップムービーとして楽しむ手もあるが、ローラ本人も「すごいいじめっ子だったから自業自得」と言われる始末。

即ちクズがクズに復讐して誰もいなくなるのだ。どうでもいい。
したことあるかないかゲームで人間関係がガタガタになり疑心暗鬼の泥沼にハマるのは面白かったけれど、誰一人として「この子だけは助かってほしい」「お願い死なないで!」と思えるヤツがおらず、「あー……死んでも仕方ないな……」と突き放して見てしまうので、カタルシスが得られない。
登場人物の中で元親友のブレアだけはほんのちょっと悼んでたが、コイツが元凶ともいえるんでどうしようもない。

たとえばだが、ローラが悲劇のヒロインに仕立て上げられたら違う感想を持った。
レイプ動画をアップされたのを苦に自殺とか、それなら死にたくなるのもよくわかるし全面的に同情する。が、いじめの発端になった動画の内容がアレすぎる。プラス、ローラ自身がいじめっ子で仕返しされたとくれば同情心も薄れ、彼女が復讐を成し遂げたところでなんだかなあ……となる。
……が、むしろローラをそういう人間として描いた判断に敬意を表したい。
いじめられっ子=可哀想、全面的な被害者の構図は短絡で、現実はもっと複雑だ。人間関係の摩擦が原因で発生するいじめを、生贄の儀式のように撮るのは現代に即さない。

登場人物の死にざまが無駄に惨いのも特徴。
一番はミキサーだが、あんまり唐突だったので驚く・怯えるより先に笑ってしまった。ある程度同情なり共感なりしてるヤツが惨たらしく死ねば「ひいい……」となるが、そうでもないヤツがアクロバティックな自殺をかますので、いっそギャグ。
サブリミナル的に挿入されるショッキングなワンカットなど、同時進行するネット画面と合わせ意欲的な構成をしているのは買いたい。
メッセージを入力するのにいちいち書いては消し書いては消しするのも、カカカカカ……と待ち時間の音やフレーム外で吠える犬の声も、じわじわ水位をあげる緊張感や切迫感、葛藤を表現しとても良い。終盤、ある惨劇の直後にカメラがパンしてブレアの部屋の壁の...

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2020年5月4日

読書状況 読み終わった [2020年5月4日]

いじめ自殺した女子高生の怨霊がインターネットに憑依し、いじめっ子たちに復讐していくホラー。
ストーリーが全て画面上で進行していくので一人称視点のライブ感を味わえる……が、見難い。おまけに画像が粗く、特に男性陣の見分けが付かない。どっちがアダムでミッチ??いや、さすがにケンは体格でわかるけど。もっと言えばビジュアルだけならコイツが一番いじめられっ子ぽいけど。
女性陣もローラとヴァル、まれにブレアがごっちゃになる。ジャスは金髪なのでわかりやすいが、あとはみんなダーク系の茶髪。
冒頭、配給会社のロゴがバグるのはびっくり。故障なのか演出なのか……人物相関図をろくに把握できないまま進行するので軽く混乱。スカイプユーザーならお馴染みの画面や用語が飛びだすのも面白い。

肝心の内容はというと微妙。
というのも、主人公たちの誰一人として好感を持てない。同情の余地のないクズぞろいだ。
動画のコメント欄での中傷は過ちとして流せても、ドラッグレイプで堕胎させたヤツ、死人の墓にイタズラしたヤツとおいそれはあかんだろさすがに。アメリカのちょっとリア充な高校生ってあんな荒んでるの?プロフィール写真から既に自己主張強すぎて引く。個人情報に対するリテラシーとかプライバシーの概念ないのか、って突っ込みたくなるほど顔や部屋を露出しまくり。
向こうの若い子にとってSNSは友人知人との交流ツールで、匿名性はどうでもいいんだな……と日本人との国民性の違いを思い知らされる。いや、日本でもTwitterで顔出し炎上→特定されるのはいるけど。
クズならクズでいっそいじめられっ子側に感情移入し、憎いいじめっ子たちを虐殺していくデストラップムービーとして楽しむ手もあるが、ローラ本人も「すごいいじめっ子だったから自業自得」と言われる始末。

即ちクズがクズに復讐して誰もいなくなるのだ。どうでもいい。
したことあるかないかゲームで人間関係がガタガタになり疑心暗鬼の泥沼にハマるのは面白かったけれど、誰一人として「この子だけは助かってほしい」「お願い死なないで!」と思えるヤツがおらず、「あー……死んでも仕方ないな……」と突き放して見てしまうので、カタルシスが得られない。
登場人物の中で元親友のブレアだけはほんのちょっと悼んでたが、コイツが元凶ともいえるんでどうしようもない。

たとえばだが、ローラが悲劇のヒロインに仕立て上げられたら違う感想を持った。
レイプ動画をアップされたのを苦に自殺とか、それなら死にたくなるのもよくわかるし全面的に同情する。が、いじめの発端になった動画の内容がアレすぎる。プラス、ローラ自身がいじめっ子で仕返しされたとくれば同情心も薄れ、彼女が復讐を成し遂げたところでなんだかなあ……となる。
……が、むしろローラをそういう人間として描いた判断に敬意を表したい。
いじめられっ子=可哀想、全面的な被害者の構図は短絡で、現実はもっと複雑だ。人間関係の摩擦が原因で発生するいじめを、生贄の儀式のように撮るのは現代に即さない。

登場人物の死にざまが無駄に惨いのも特徴。
一番はミキサーだが、あんまり唐突だったので驚く・怯えるより先に笑ってしまった。ある程度同情なり共感なりしてるヤツが惨たらしく死ねば「ひいい……」となるが、そうでもないヤツがアクロバティックな自殺をかますので、いっそギャグ。
サブリミナル的に挿入されるショッキングなワンカットなど、同時進行するネット画面と合わせ意欲的な構成をしているのは買いたい。
メッセージを入力するのにいちいち書いては消し書いては消しするのも、カカカカカ……と待ち時間の音やフレーム外で吠える犬の声も、じわじわ水位をあげる緊張感や切迫感、葛藤を表現しとても良い。終盤、ある惨劇の直後にカメラがパンしてブレアの部屋の壁の...

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2020年5月4日

読書状況 読み終わった [2020年5月4日]

よく「他者に読まれない作品には意味がない」と聞く。「公開されない作品には意味がない」と。そう唱える人たちの持論では、小説でも絵でも古今東西あらゆる創作物は他者に認められ初めて存在価値が得られる。

ずっと疑問に思っていた。

はたして他人の目にふれない作品には本当に意味がないのか?
作品を公開し、認めてもらうだけが全てなのか?

SNSが発達した現代、クリエイターが発表の場を得るのは容易い。Twitterは無料の、しかも膨大な作品が掲載された日刊コミック誌で、ボケッと受動態でいても無数の作品がRТされてくる。小説投稿サイトから受賞を経ず商業デビューした作家も多い。

でも本当にそれが全て?
いいねの数に振り回されて本当に描きたいものや書きたいものを見失ってはないか。読者に媚びて迷走してないか。

沢山の人に褒められる作品は素晴らしい。
けれどどんなに多くの人がちやほやしてくれたって、自分が満足できなければ何の意味もない。創作活動は究極の自慰だ。自己満足だ。他人の為に書くんじゃない、大前提として作者は一番最初にして最高の読者なのだ。
ヘンリー・ダーガーは一切見せず読ませず知らせず、自分のためだけに自分の書きたいようにこの未完の大長編を書き続けた。
創作物を自己承認欲求を満たす交流ツールに落とすアーティストやクリエイターもどきが多い中、孤独で貧乏な彼は、抑圧からの現実逃避に駆り立てられ別の世界を構築した。
拷問と虐殺に彩られたおぞましい、歪んだ、そして可憐な。理想の世界への変態的な執着。
彼は自分という一番の読者に対し徹頭徹尾貪欲で正直にあり続けた、ある意味世界でいちばん幸せな創作者だ。

ヘンリー・ダーガーの経歴を見、ゴッホを思い出した。今では世界的な巨匠だが、生前は認められず不遇だったあのゴッホだ。
ゴッホは他者に肯定されたかったろうが、ヘンリーはそんなのどうでもよかったのでは。むしろ自分の恥部を知られたくなかったはずだ。誰だって自慰を公開するのは恥ずかしい。
ヘンリーは何度も養子を申請しては断られたというが、この物語を読めばサドでペドじゃないかと疑いを抱いても致し方ない。
真偽は永遠に不明だが、この物語はヘンリーの救いとして機能していた。
彼の死後に発見され、アウトサイダーアートの傑作と評価を受けるが、既にこの世にいないヘンリーにはどうでもいいことだ。

この物語には意味がある。
むしろ意味しかない。

ヘンリーの執筆時の心境はわからない。本音では自作の良き理解者を求めていたのかもしれないが、誰に見られずとも書くことだけで救われていた。
世の中には自分の為だけに書き続ける物語があっていい。
それがどんなにおぞましく、醜く、歪んでいようが。あるいは倒錯していようが、自由に書いていいのだ。

2020年5月4日

読書状況 読み終わった [2020年5月4日]

タイトル詐欺といおうか、レズ風俗の描写は殆どない。本作でメインになるのは「さびしすぎて」の部分。なぜ著者はそんなに寂しくてしんどいのかが、長々と尺を割いて語り起こされる。
毒親ものに分類するのは簡単だが、自分は違和感を覚える。というのも、親のこと本当に嫌いなの??作中では「母親が嫌いだ」と断言してるのだが、成人してからも母親に抱き付いたり乳をさわったり、べったり甘えてるのを見るととてもそうは思えない。
それ以上に、本気で嫌って憎んでたらあんな風に描かない。もっと醜く、露悪的に描く筈だ。
ふみふみこの「愛と呪い」は、新興宗教を信仰する家庭に生まれ、母親に肉体的虐待・父親に性的虐待を受け続けた作者の自伝的漫画だが、そこでは父親の顔が意図的に描かれない。倒錯したプレイを強いる援交相手の顔もぐちゃぐちゃに塗り潰されている。
表現者の業と言うべきか闇と言うべきか、仮に著者が本当に母親を嫌ってたら、あんな頭身低めに親しみやすくは描かないし絶対描けない。だっていくらでも嫌な奴に描けるのだから。読者に「何コイツ、サイテー」と思わせる、それが一番の復讐なのだから。
本作を読んで、著者の母親に嫌悪感を持った人は少ないのでは?逆に擁護する意見も多い。それは一方的に加害者(とされる側)を貶めず、ある程度公平性を担保できてる証左でもある。親子関係でしんどい思いをしたのは事実だろうが、共依存的な愛着も感じているのではないか。

酷評レビューを読み、自己承認欲求のかたまりの勘違いメンヘラの胸糞レポートだったらやだなあ……と身構えていたのだが、想像したよりポップな仕上がりでよかった。絵柄がユルくデフォルメされてるので、壮絶な体験もフラットに読める。あるかないかわからない処女膜へのツッコミは笑ってしまった。「私達の28年間を忘れてしまったのか膜よ、別にいいけど……」て(笑)
摂食障害や鬱でボロボロになりながら、そんな自分を面白く演出するユーモアを忘れないセンスは見事。にしても更衣室のロッカーにこんにゃく隠すって……。

主人公の親が毒親か否かは意見が分かれる所。自分はちょっと無神経なだけで悪い人達じゃないと思った。「正社員じゃないからウチにお金入れなくていいよ」はフツーに言われたことあるので笑ってしまった。「え、ずっと休んでたのかと思ってた」も、娘が家でゴロゴロするのを見てた感想で悪気はない。
アレが毒親なら言動がほぼ共通するウチの母もそうなってしまうのだが、あの世代の人たちはそういう生き物だと思って諦めた方がいい。
むしろ主人公の言動のが違和感が強い。父親の「アルバイトじゃ部屋借りられない」発言を真に受けるとか、え、友人にあたるとかネットで調べるとかしなかったの。
しかも真実を知ったのが去年て、レズ風俗の年齢基準で去年なら27歳、単行本が出た年で考えるなら下手すると30行ってる。それでこの世間知らずぶりは凄い。
メンタル病んでる人を責めるのも心苦しいのだが、「仕事が上手くいくなら友達いらないどうでもいい」と初詣で願掛けしたくせに友達を欲しがったり、「友達がいるなら全部上手くいく」と突然根拠のない逃避願望に縋り付いたかと思いきや、その友達が誘ってくれた創作サークルを勝手に抜けたりと、いや矛盾してるよどっちやねん。
スマホに一人も友達を登録してない、というか友達がマジで存在しない自分にしてみれば、親に嫌味言われて駆け込み寺候補に上がる友達や親戚がいるだけ恵まれてるのだが……
「迷惑かけて嫌われたくない」と即却下してたけど、自分のケチなプライドか被害妄想由来の感情だし、「友達」という居場所……もとい逃げ込み先を結び付けられる著者は幸せ者だ。世の中にはそんな網が存在しない人間もいる。

少し話が逸れるが、私は「毒親に育てられた」という人の話をまず...

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2020年5月3日

読書状況 読み終わった [2020年5月3日]

タイトル詐欺といおうか、レズ風俗の描写は殆どない。本作でメインになるのは「さびしすぎて」の部分。なぜ著者はそんなに寂しくてしんどいのかが、長々と尺を割いて語り起こされる。
毒親ものに分類するのは簡単だが、自分は違和感を覚える。というのも、親のこと本当に嫌いなの??作中では「母親が嫌いだ」と断言してるのだが、成人してからも母親に抱き付いたり乳をさわったり、べったり甘えてるのを見るととてもそうは思えない。
それ以上に、本気で嫌って憎んでたらあんな風に描かない。もっと醜く、露悪的に描く筈だ。ふみふみこの「愛と呪い」は、新興宗教を信仰する家庭に生まれ、母親に肉体的虐待・父親に性的虐待を受け続けた作者の自伝的漫画だが、そこでは父親の顔が意図的に描かれない。倒錯したプレイを強いる援交相手の顔もぐちゃぐちゃに塗り潰されている。
表現者の業と言うべきか闇と言うべきか、仮に著者が本当に母親を嫌ってたら、あんな頭身低めに親しみやすくは描かないし絶対描けない。だっていくらでも嫌な奴に描けるのだから。読者に「何コイツ、サイテー」と思わせる、それが一番の復讐なのだから。
本作を読んで、著者の母親に嫌悪感を持った人は少ないのでは?逆に擁護する意見も多い。それは一方的に加害者(とされる側)を貶めず、ある程度公平性を担保できてる証左でもある。親子関係でしんどい思いをしたのは事実だろうが、共依存的な愛着も感じているのではないか。

酷評レビューを読み、自己承認欲求のかたまりの勘違いメンヘラの胸糞レポートだったらやだなあ……と身構えていたのだが、想像したよりポップな仕上がりでよかった。絵柄がユルくデフォルメされてるので、壮絶な体験もフラットに読める。あるかないかわからない処女膜へのツッコミは笑ってしまった。「私達の28年間を忘れてしまったのか膜よ、別にいいけど……」て(笑)
摂食障害や鬱でボロボロになりながら、そんな自分を面白く演出するユーモアを忘れないセンスは見事。にしても更衣室のロッカーにこんにゃく隠すって……。

主人公の親が毒親か否かは意見が分かれる所。自分はちょっと無神経なだけで悪い人達じゃないと思った。「正社員じゃないからウチにお金入れなくていいよ」はフツーに言われたことあるので笑ってしまった。「え、ずっと休んでたのかと思ってた」も、娘が家でゴロゴロするのを見てた感想で悪気はない。
アレが毒親なら言動がほぼ共通するウチの母もそうなってしまうのだが、あの世代の人たちはそういう生き物だと思って諦めた方がいい。
むしろ主人公の言動のが違和感が強い。父親の「アルバイトじゃ部屋借りられない」発言を真に受けるとか、え、友人にあたるとかネットで調べるとかしなかったの。
しかも真実を知ったのが去年て、レズ風俗の年齢基準で去年なら27歳、単行本が出た年で考えるなら下手すると30行ってる。それでこの世間知らずぶりは凄い。
メンタル病んでる人を責めるのも心苦しいのだが、「仕事が上手くいくなら友達いらないどうでもいい」と初詣で願掛けしたくせに友達を欲しがったり、「友達がいるなら全部上手くいく」と突然根拠のない逃避願望に縋り付いたかと思いきや、その友達が誘ってくれた創作サークルを勝手に抜けたりと、いや矛盾してるよどっちやねん。
スマホに一人も友達を登録してない、というか友達がマジで存在しない自分にしてみれば、親に嫌味言われて駆け込み寺候補に上がる友達や親戚がいるだけ恵まれてるのだが……
「迷惑かけて嫌われたくない」と即却下してたけど、自分のケチなプライドか被害妄想由来の感情だし、「友達」という居場所……もとい逃げ込み先を結び付けられる著者は幸せ者だ。世の中にはそんな網が存在しない人間もいる。

少し話が逸れるが、私は「毒親に育てられた」という人の話をまず疑っ...

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2020年5月3日

読書状況 読み終わった [2020年5月3日]

ギャグの間のとり方が秀逸。近しいものを挙げるならweb連載初期の頃の「堀さんと宮村くん」か。あー懐かしーと思いながら読んでた。
pixivの漫画もぼちぼち読んでいるが間のとり方が独特。作者のセンスが生み出すズレた掛け合いは妙な中毒性がありクスッとする。
ぶっちゃけ絵はヘタウマのユルい画風で、ほのぼのした味わいはあっても尖った魅力はないのだが、それが学園生活の日常に馴染んでいる。
ほむら先生はいわゆるダメ先生で、教師としての自覚もあんまりない。それに片想い中の蓮見との距離感もいい。

2020年5月3日

読書状況 読み終わった [2020年5月3日]

絵本版「悪徳の栄え」、または救いの一切ない「小公女」。エドワード・ゴーリーの著作の中で類似を挙げるなら「敬虔な幼子」。
これは邪悪な心を宿す敬虔な幼子が、人々に善行施していくもあっけなく死ぬ(ただし本人だけは満足げ)な話で、「不幸な子供」のアンチテーゼとして機能している。
あちらの坊やが独善を極め、ある意味満足して死んだのに比べ、こちらはただひたすらに可哀想。
善良な女の子が次々と不幸に見舞われ身を持ち崩していくのだが、終始フラットに描かれている為そこまで没入せず、読後はなんとも言えない座り心地の悪さが残る。
個人的には「ギャシュリークラムのちびっ子たち」「おぞましい二人」の方が上。
「不幸な子供」は可もなく不可もなく普通な印象。エドワード・ゴーリーの著作の中でも特筆すべき短所や長所がなく無難といおうか……「おぞましい二人」ほど毒が強くなく、「ギャシュリークラムのちびっ子たち」のようなあっけらかんとしたユーモアもない。
「ギャシュリークラムのちびっ子たち」が背景を一切語られずサクサクスナック感覚で死んでいくのに比べ、シャーロットはある程度生い立ちが明らかにされており同情心がそそられる。とはいえAmazonのあらすじで最後の1ページ以外ほぼネタバレされているので、それ以上の悪趣味な刺激を求めると物足りない。
シャーロットはどんどん不幸になり悲惨なまま終わる。救いはないし慰めもない。彼女自身に何の咎がなくとも、不条理で気まぐれな運命は容赦しない。いや、運命という事象すら本当にあるか怪しいものだ。
彼女が不幸のどん底に落ちたのはただの偶然の連鎖で、何の因果関係もないというのが現実だ。
これが「おぞましい二人」なら、生い立ちを除く結構な部分本人たちの自業自得なので黒いユーモアがわかなくもないが、シャーロットの場合は完全に一方的な被害者。どうしたって後味が悪い。
誤解しないでほしいが、私は後味の悪い話が好きだ。普段はホラーやミステリー中心に読んでいるし、胸糞鬱展開も大好きな方だ。なのでエドワード・ゴーリーも好きなのだが、やっぱりパンチが弱い。「ギャシュリークラムのちびっ子たち」より先に読んでれば違った感想を持ったかもしれない。
とはいうもののシャーロットの事情を知ったから同情を寄せる訳で、「ギャシュリークラムちびっ子たち」が面白いのは子どもたちの性格も背景も語られないからに尽きるなら、人間って自分勝手で都合のいい生き物だな……と自虐の念も懐く。
身も蓋もないことを言ってしまえば、「ギャシュリークラムのちびっ子たち」は記号でしかない。そこに生活が透けてこない。
シャーロットはなまじっか「悲劇のヒロイン」の役割が与えられてる分、そういう目で見てしまうのは致し方ない。テレビで流れる虐待のニュースに涙しても、海外で飢え死ぬ子供たちやゴミを拾って生計を立てる子供たちの存在は遠いのが良い例だ。
救われない者が救われないまま終わる、この世は得てしてそういうことが起こり得る。というか、それが普通だ。だから私達はフィクションに逃避するのだ。

2020年5月3日

読書状況 読み終わった [2020年5月3日]

レゼが東京喰種のトウカに見える。表紙から全裸で攻めている。
今巻のヒロインはレゼでマキマは最後にちょろっと出てくるだけ(けどインパクトはすごい怖い)レゼ編が一巻ぽっきりでまるっと完結するのも好感触。
たまたまキリが良かったのだろうが、変なところでブツ切りしたり引っ張るより、コンパクトにまとめてくれる方が嬉しい。
頭の中はうまい飯と女で一杯、それ以外はどうでもいいムッツリだったデンジが、レゼと対峙し「仕事が認められてきた。このままじゃダメか?」と言った時は、成長というか変化を感じられほろり。以前のデンジなら絶対言わなかったセリフ。
シリアスとギャグをフラットに混ぜ込んだユーモアセンスも健在。ほのぼのとグロとグルメが共存するドロヘドロを思わせる。絶体絶命の状況でもデンジと仲間たちが妙にヌケてるので、シリアス疲れすることもない。クリーチャーデザインも優秀。レゼの悪魔形態はサイレントヒルの敵キャラに出てきそうだ。異形頭好き大興奮。
特異課の面々もちょっと掘り下げられてる。天使の悪魔とアキのやりとりにはじーん。それぞれ重たい過去を抱えてそうで気になる。
それにしてもモブは瞬殺。デンジやアキの同僚、または先輩として一定の経験と実績を積んでてもあっさり虐殺されてくので、「こんな薄紙のような防備でよく保ったな……」となる。まあそれだけでレゼや新しい悪魔たちが強いのだけど、モブサゲで主人公たちアゲ、という感は否めない。毎巻大量に使い捨てられるモブハンターたちが気の毒。先輩いい人そうだったのに……
最後はちょっとしんみりした。レゼの正体に詳細に言及せず、ふわっと匂わすだけにしたのも余韻を引き立てる。本当にデンジに恋してたのか、だとしたらどこから……最初は計画犯で近付いて、助けられた時に本気になったのか。「仕方なくねえけど仕方ねえだろ」な、デンジの青臭い一途さも良かった。
というかマキマさん怖い。あの人ラスボスなんじゃないの。
映画の話や田舎の友人の畑を手伝いに行くエピソードなど、ちょいちょい普通の人あるあるな日常小咄を挟んでくるけど、よもやそれも普通の人を演じるフェイクでは……と思えてならない。

2020年5月3日

読書状況 読み終わった [2020年5月3日]

レゼが東京喰種のトウカに見える。表紙から全裸で攻めている。
今巻のヒロインはレゼでマキマは最後にちょろっと出てくるだけ(けどインパクトはすごい怖い)レゼ編が一巻ぽっきりでまるっと完結するのも好感触。
たまたまキリが良かったのだろうが、変なところでブツ切りしたり引っ張るより、コンパクトにまとめてくれる方が嬉しい。
頭の中はうまい飯と女で一杯、それ以外はどうでもいいムッツリだったデンジが、レゼと対峙し「仕事が認められてきた。このままじゃダメか?」と言った時は、成長というか変化を感じられほろり。以前のデンジなら絶対言わなかったセリフ。
シリアスとギャグをフラットに混ぜ込んだユーモアセンスも健在。ほのぼのとグロとグルメが共存するドロヘドロを思わせる。絶体絶命の状況でもデンジと仲間たちが妙にヌケてるので、シリアス疲れすることもない。クリーチャーデザインも優秀。レゼの悪魔形態はサイレントヒルの敵キャラに出てきそうだ。異形頭好き大興奮。
特異課の面々もちょっと掘り下げられてる。天使の悪魔とアキのやりとりにはじーん。それぞれ重たい過去を抱えてそうで気になる。
それにしてもモブは瞬殺。デンジやアキの同僚、または先輩として一定の経験と実績を積んでてもあっさり虐殺されてくので、「こんな薄紙のような防備でよく保ったな……」となる。まあそれだけでレゼや新しい悪魔たちが強いのだけど、モブサゲで主人公たちアゲ、という感は否めない。毎巻大量に使い捨てられるモブハンターたちが気の毒。先輩いい人そうだったのに……
最後はちょっとしんみりした。レゼの正体に詳細に言及せず、ふわっと匂わすだけにしたのも余韻を引き立てる。本当にデンジに恋してたのか、だとしたらどこから……最初は計画犯で近付いて、助けられた時に本気になったのか。「仕方なくねえけど仕方ねえだろ」な、デンジの青臭い一途さも良かった。
というかマキマさん怖い。あの人ラスボスなんじゃないの。
映画の話や田舎の友人の畑を手伝いに行くエピソードなど、ちょいちょい普通の人あるあるな日常小咄を挟んでくるけど、よもやそれも普通の人を演じるフェイクでは……と思えてならない。

2020年5月3日

読書状況 読み終わった [2020年5月3日]

成人してからすっかり少女漫画を読まなくなった。
花ゆめ系を読んでたのも随分昔の話になるが、菅野文さんはデビュー作の「ソウルレスキュー」が大好きで、当時は少年漫画っぽいストーリーや魅力的なキャラクターに夢中になった。
「薔薇王の葬列」は有名な薔薇戦争をモチーフにした意欲作。史実との相違点を挙げれば、リチャード3世が両性具有に苦悩する悲劇の人物として描かれている。彼(彼女?)はヒーローにしてヒロインなのだ。
話が薄っぺらいと少女漫画を貶すようなレビューもあったが、私は大いに評価したい。レビュアーは重厚な歴史ものを期待してたのかもしれないが現代には現代のアプローチがある。
薔薇戦争という世界史でもスルーされがちな、言ってしまえばマイナーな題材を扱うなら、それをより多くに面白く届けるアプローチが必要となる。「へー薔薇戦争の話かー薔薇戦争って何?」って読者も「えっ、リチャード3世が両性具有!?」となれば、とりあえず一巻は手にとりたくなるじゃないか。それでハマれば一気読み、ウィンウィンの関係だ。
肝心の作品のほうは菅野文さん特有のスッキリした絵柄が、耽美な雰囲気と相俟って独特のダークな世界観を構築している。ジャンヌ・ダルクの霊を彷彿とさせるような謎の存在も出てきて、史実と伝説の境目が曖昧な印象。
そんな清潔感ある絵柄に反し中身はドロドロ。
一巻では主にリチャード3世の家庭内での確執が中心となるが、両性具有の秘密故母に愛されない孤独、唯一の父を失った絶望などが描写され、屈折した人格を形成するに至ったリチャード3世の陰性の魅力にぐいぐい引き込まれる。
続く話では女の嫉妬や情念渦巻く愛憎劇に政治的な陰謀劇が交錯し、どんどん暗雲が立ち込めていく。
女の感情を否定できないリチャードも業が深いが、ヘンリー6世妃マーガレット、のちに兄嫁となるエリザベスは肉欲や相続が絡む分さらにドロドロ。比較的男性陣はお気楽(というか楽観的)だが、女性陣は怖い怖い。
女性陣の秘めたる暗部にぞっとする昼ドラ要素を盛り込みながら、男性陣の野心が戦況を左右する歴史物としての読みごたえもある。
リチャードは見た目中性的な美少年で、話し言葉や思考をはじめとする内面もどちらかというと男性的。故にヘンリー6世や男キャラとの絡みはBL色が強く、その手の作品が好きな人にもお勧めしたい。

余談だが「薔薇王の葬列」が面白かった人は「王国の子」(びっけ)も読んでほしい。
こちらはテューダー朝モチーフの架空の王国が舞台の宮廷劇で、ヘンリー8世やエリザベス、その臣下や姉妹が登場する。舞台設定こそ架空だが、人物名はほぼそのまま。
幼き日のエリザベス女王の影武者にされた少年が主人公の入れ替わり・身代わりもので、近年描かれた少女漫画の流れを汲む歴史漫画の中では本作と並んで高いクオリティ。
併せて読むとよりイギリス史に詳しくなれる。

2020年5月3日

読書状況 読み終わった [2020年5月3日]

もっと評価されるべき隠れた傑作。
ちょっと古いけどエレメンタルジェレイドとか、青年×少女や人外バディもの好きには猛烈におすすめしたい。
人のカタチをした兵器であるサヤビトが主人(アド)とコンビを組んで活躍する話で、少年漫画的なストーリーのまっすぐさと、少女漫画的な繊細でかわいらしい絵柄がよくマッチしてる。
登場人物の心理描写も秀逸で、詩的なモノローグや演出は本当ぐっとくる。アドとサヤビトの関係性も友人・恋人・家族・主従とさまざまで、好みのコンビを見付けるのも楽しい。
終盤はちょっと超展開になるが、キャラに愛着を持てれば最後まで楽しく読める。
自分の一押しはコワモテだけど情に厚い局長。

2020年5月3日

読書状況 読み終わった [2020年5月3日]

グルメ漫画要素まで備えてきて非の打ち所がない、まさしく鉄壁の布陣。
原始的な素材を創意工夫で調理し美味しい料理に仕上げる、老人と子供それぞれに食べやすい料理を提供するとか、なんてできる男なんだ大統領。一国に一人欲しいぞ大統領。物語も大きく動き、後半では大統領と愉快な仲間たち一行が魔族の本拠地に向け出発。
道中は比較的のんびりした雰囲気だったのだが、海底ダンジョンじゃミノタウロスとぶち当たり戦闘突入。大統領の筋肉と魔力が爆発する。
それにしても本当に彼は人格者。
上記の料理の件もそうだが、イキリからヘタレに転落して女の子たちにいじり倒されるヨシュアスをなにかと庇い、「若者には誰にも等しく糧を得る権利があるのだ」って……
ニート擁護論と勘違いする馬鹿が沸きそうだけど、この手のセリフは「お客様は神様です」と同じで、施す側が言うからこそ比類ない説得力があるんだよな。
しかしメイクを落としたらあんなショタな美少年が出てくるとか誰が予想した。ツリ目がタレ目になってるしほぼ原形留めてないぞ。
姫様の退場はちょっと残念。悔いはないそうなので昇天を祈りたいが、母親の件はどちらの言い分が正しかったのか疑問が残る。
この作品の凄い所は魔法の理論や種族の成り立ちなど、ファンタジーな世界観がガチで作りこまれてる点。野菜を栽培促進する魔法など、ただ便利で万能じゃなく基礎的な仕組みが解説されるので面白い。
魔族に関しては最初からそういう種族として生まれ付くのではなく、上等な魂の持ち主だけが一度死んで生まれ変わるとする視点が斬新(なお劣等な魂の持ち主はただのアンデッドになる)
大統領の人たらしは健在で、ほぼ全ての人と動物から慕われまくっているのだが不思議とそれが嫌味にならない。というのも彼が人格者で、指導者としても一流に描かれているから。
内戦を終わらせ国を復興させた大統領としての素地が、「この人なら付いていきたくなるだろうな」と行動の逐一にご都合主義じゃない説得力を持たせるのに成功してる。
それを除いても年少者を案じ、年長者を労わり、死に逝く者を敬う姿勢は見事に尽きる。
今後ヨシュアスの姉たちも感化され味方に加わりそうな気がするのだが……

2020年5月3日

読書状況 読み終わった [2020年5月3日]
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