裏世界ピクニック5 八尺様リバイバル (ハヤカワ文庫JA)

著者 :
  • 早川書房 (2020年12月17日発売)
4.15
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本棚登録 : 315
感想 : 21
4

 今回の話はバリエーション豊かで、短編集っぽさが強く出ていたように思う。
 裏世界に侵入したとき、或いはそれに属するものと邂逅したときの、ひりつくような緊張感は健在で、ホラーをあまり嗜まない身としても(或いはだからこそ)十分に楽しめた。
 SF的なアプローチで裏世界の事象を解き明かす面白さは、今回は少し抑えめな気がする。二人の関係性も前回大きく進展した分、これまでのように、最後に解像度が一段階高まって終わるという感じでもなく、終わり方としては少し弱いように感じた。二編目以外は、正直今後回収される要素が多いように感じて、しこりのようなものが残ったので、星4をつけた。
 とはいえ、決してつまらなかった訳ではない。鳥子の気持ちに確信を抱きながらも、踏み込む決断ができない空魚は焦れったいが、そういう葛藤をこそ読みたかった。追い打ちをかけるように、本作らしい手法で、鳥子の自分に対する感情の大きさに気づかされるのも良かった。勿論、気味が悪いながらも、どこか心惹かれる裏世界の情景描写は良かったばかりか、ますます磨きがかかっているように思えた。

 余談だが、前回くらいから、古い怪談に起源を持つモチーフが取り込まれているのは、なにか意図があるのだろうか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 百合SF
感想投稿日 : 2020年12月24日
読了日 : 2020年12月24日
本棚登録日 : 2020年12月24日

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