薄闇シルエット

著者 :
  • KADOKAWA (2006年11月30日発売)
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前へ前へ、プラスの方向へ進むことが正解なのか。三十七歳になってもハナにはわからない。

長年付き合ってきたタケダくんはハナと別れたあと、正社員になって若い女と結婚した。
ハナと一緒に古着屋を営んできたチサトはブランド品買取に手を付けて、質屋の息子と結婚した。
ハナの妹は家事と育児に悪戦苦闘している様子で、自分の母親のようにはなれていない。

ハナは着古した子ども服から絵本をつくることを思いつき、天才的なひらめきを持つキリエに手伝ってもらって話題になる。
承認欲求は満たされたような気もするけど、なんだか自分のやりたかったこととは離れてきたみたいだ。
チサトもタケダくんもみんなそれぞれ自分なりの幸せを手に入れたのに、自分だけ何も持っていないとハナは感じて泣いてしまう。

そして気づく。誰かの価値観を自分のもののように錯覚していただけではないか、と。
間違って何かを掴んでも離せばいい。それでまた何かを掴めばいいのだ、と。

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鳥の鳴き声を聴いて勃起(!)する人もいるくらいだし、人によって幸せの定義はぜんぜん違う。
なんでもかんでも手作りしていたハナのお母さんと、ハナの妹の子育てが違うのも当たり前。何が正解なのかはわからない。全部正解なのかもしれない。人に答えを求めることはできなくて、答え合わせは自分のなかでするものなのだ。

セレブチサトの結婚式で、「結婚なんてつまんない。結婚も陣内さんもチーちゃんを幸せにできない。でも、チーちゃんは自分で幸せをもぎとってくる腕力を持った人」とスピーチをするハナがかっこよくてしびれた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 角田光代
感想投稿日 : 2022年2月7日
読了日 : 2022年2月5日
本棚登録日 : 2022年2月5日

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