酒井高太郎sakaikotaroさんの感想・レビュー

S,M,L,XL+: 現代都市をめぐるエッセイ (ちくま学芸文庫 コ 12-2)

著者 : レム・コールハース 太田佳代子 渡辺佐智江

• 筑摩書房 (2015年5月8日発売)

(01)
1990年代から2010年代までの著者の論考の一部が収録されている。この約20年間のスパンのなかで、都市はどのような情況にあったのか。
暴論まがいの筆致で、レトリカル、ポエティック、シンボリック、スキャンダラス、さまざまな言葉を巧みに用いて、都市の非人間性と猥雑性を暴き立てている。
中盤で、個別の都市への批評が挿入されている。ベルリン、ロッテルダム、アトランタ、ニューヨーク、シンガポール、そして東京、序にあたるパートに「ジェネリック・シティ」、締めに「ジャンクスペース」(*02)をもってくる構成は、日本語文庫版だけの構成なのだろうか、しびれる。

(02)
小タイトルとしても取り上げられたジェネリックやジャンク、ビッグネスなどのキーワード以外にも、インフラやサブシステムという都市機能や、特殊機能としてのランドスケープが現代で演じてる役についても多く言及されており、一筋縄ではいかないカオスな都市論となっている。
必ず失敗する都市計画に対し、このような「仮説を立てまくる」批評というプロジェクトの有効性は、今後評価されてもよいだろう。

感想投稿日 : 2019年3月21日

読了日 : 2019年2月24日

本棚登録日 : 2019年1月14日