近世建築論集 (acetate)

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  • アセテート (2006年3月1日発売)
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(*01)
中核となる規矩術の研究部分を挟む前後の中谷氏の論考を読むだけでも、建築分野にとどまらない近世と近代との間にある事情を掴めると思われるが、規矩の技術がどのように近代の受け皿になったかを知る上で、研究部分も一読されることを勧めたい。
研究部分は先に中谷氏の矩術の研究があり、その後に田中氏の規術の研究がくる。大雑把には、本書で初めて知るところであったが、矩術は直線系、曲尺による解法であり、規術は曲線系、コンパスによる解法である。
柱梁だけであるなら直線と直角で解けるが、ここに勾配のある屋根が載るとき、直角でない角度の問題が生じ、また、切妻でない寄棟系の屋根を選択したときは、更に棟から屋根の四隅への角度、多くは45度でない3Dな角度が出てしまう。このとき直線である木材でどう架構するか、木口の角度、交差の角度もそうであるし、材の配分もそうであるが、算学と幾何学、三角関数と円弧の理解がなくては、棟が上がらず、軒が納まらない。その規術の応用や理論とモデリングを経て別次元へと建築を導く技術として矩術も評価されている。
江戸後期から明治前期にかけて、職にまつわる人や本をメディアとして規矩術が流通した経過についても筆が及んでおり、そこに見えてくる近世性と近代性の連関にも触れている。
紙上のプロジェクトであり規矩を最大限に応用した螺旋建築、前川氏の紹介になる建築語彙集の図像学、洋風建築のイコンとなったブラケットのプロトタイプ、建や築や家や化が組まれ近代の熟語となり生まれ出る時に意味したニュアンスなどが、近世-近代を、ともすると断絶と考えられがちなこの19世紀の時代を、統合する症例や現象として捉えている点で、近代論の停滞を破り、議論を先へと進めている。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: modern
感想投稿日 : 2016年4月29日
読了日 : 2016年4月17日
本棚登録日 : 2016年1月31日

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