新装版 富士山頂 (文春文庫) (文春文庫 に 1-41)

著者 :
  • 文藝春秋 (2012年6月8日発売)
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感想 : 35
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名作と言われているので、一度は読んでおこうということで読了。
さすが、プロジェクトX第1話のテーマになった富士山レーダー建設の話。それを気象庁の測器課長というまさに中心的な役割で推進したのが当時小説家との二足のわらじを履いていた新田次郎本人。そりゃあ小説にもするわな。

富士山頂はときに風速60mを超える風が吹く過酷な環境。工事は雪の消える夏場に限られ、その中でもヘリが飛ばせるような良好な天候の日はもっと限られる。しかし2年で事業を完遂させねばならない。(まぁ、予算上2年でやるって言っちゃったからという風にも見えましたが。。)
そこで手を挙げてくるメーカー3社+α。業者選定からしっかり書く辺りが誠実と言うべきなのか、とは言え様々な人の思惑が交錯する姿が描かれ、建設開始・完成までの軌跡が描かれていきます。

個人的には、面白いのですが少し淡々としすぎているような感もありました。記録なのか小説なのかで言うと前者寄りのような気がしていて、もちろん富士山という歴史に残る仕事だという憧れはそれだけで燃える要素ではあるのですが、それを更にドラマチックにする見せ方は(敢えて?)しなかったように感じました。
どちらかと言うと役所の中の縄張り争いやしきたりのバカらしさがありのままに、せっかくの富士山レーダーを邪魔するありのまま厄介なものとして描かれていて、意趣返し的な側面があるのでしょうか。。
著者自身、と言うか主人公葛木は役所の中でも一貫して自分の考えを主張する「うるさ型」という役回りで、作家もやっているから…なんて言われつつも強力に仕事を進めていきます。文句なしにカッコいいのですが、自分でそれを描くことの難しさ!だからこそ淡々としているのでしょうか。

自然描写が圧巻だったので、今度は山岳モノでも読んでみようかな。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ビジネス
感想投稿日 : 2017年9月9日
読了日 : 2017年9月9日
本棚登録日 : 2017年9月6日

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