82年生まれ、キム・ジヨン (ちくま文庫)

  • 筑摩書房 (2023年2月13日発売)
3.82
  • (11)
  • (29)
  • (12)
  • (3)
  • (1)
本棚登録 : 303
感想 : 24
4

韓国で大ヒットとなり映画化もされ、日本でも話題になった小説。書店でも個性的な表紙が印象に残っていて、今さらながら読了しました。
前に韓国SFを読んだ際、解説がやたらとマイノリティーにフォーカスしてるな…と気になっていたのですが、時期的に韓国で本著が話題になったちょっと後。出版界が全体的に本著の影響を受けていたのかもしれません。
https://booklog.jp/users/skylark0311/archives/1/4152099860

小説のスタイルで社会問題にフォーカスし、大きく話題になったという点では、『なんとなく、クリスタル』が(最近読んだばかりというのもあり)頭をよぎります。
『なんとなく、クリスタル』で、いささか唐突につきつけられた統計データは、本著ではストーリーの端々に差し込まれる形。簡潔で読みやすい文体も含め、より暗澹たる気持ちにさせられます。
その読みやすさにも寄与しているのが、文章表現の巧みさではないかと。例えば、
「美化委員は女子、体育委員は男子がやっていた。先生が任命する場合も、自分で希望する場合も、そうだった」
という文章。社会の根っこまで「男の子はこれ、女の子はこれ」が根付いてしまっている様が描かれ、ランドセルの色じゃないですが、意識せず当たり前になっているだけに軌道修正の難しさを感じさせます。
私自身も、いち男性の本の読み手として、周囲の女性との接し方をあらためて検証しないといけない…と感じました。ただ、本著の解説にある「女性嫌悪」のような、男女対立に繋がってしまうようでは全く意味が無く、互いを尊重する気持ちを高めながら良い関係性を築くにはどうすべきか、学ぶ・修正することを心掛けていければと思っています。

個人的に印象に残った本著のフレーズを最後に。
「真っ暗な空から公平な贈り物のように、規則正しくちらちらと雪は降ってくる。」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2024年3月31日
読了日 : 2024年3月31日
本棚登録日 : 2024年3月8日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする