本作では、非常に乱暴に分けると、二人の「人間」が描かれています。
1.戦後日本の復興期を生き、地方から都会へと移動してきた人間。
2.名門一家の庇護下を離れ、娘婿から単身へと変化していく人間。
1の人物造形に関しては、著者本人も自認しているように、松本清張の影響が如実に感じられます。
2の人物造形に関しては、私立探偵という孤高の存在を創造していくには必要な作業であったのでしょう。
ネタばれにならないように本書について述べようとすると、これ以上のことを言える力量が私にはないです。
いずれにしても、前々作『誰か』および前作『名もなき毒』につづいて、会社員でありながら私立探偵のようでもある杉村三郎の魅力を伝える作品であることは確かです。
ただし個人的には、会社員小説などの仕事小説に関心があることから、私立探偵のような主人公があくまで会社員であることが重要です。
そして、上記2作と本作は、仕事と家庭の両面を描こうとしている稀有な会社員小説であることから、これらシリーズ作品をあえて順位付けすると以下のようになります。
今作 < 前作 < 前々作
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2021年8月15日
- 読了日 : 2021年8月15日
- 本棚登録日 : 2021年8月15日
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