フロリクス8から来た友人 (ハヤカワ文庫SF)

  • 早川書房 (2019年8月20日発売)
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感想 : 2
3

訳者あとがきにあるように、「時は二十二世紀。世界は、おそろしく高い知能を有数る六千人の〈新人〉(New Men)と、テレパシー、未来予知などの超能力を持つ四千人の〈異人〉(Unusuals)に支配され、六十億の60億の〈旧人〉(Old Men)は政策決定から排除されていた」。

(少なくとも旧人にとっては)この閉鎖的な体制を打破するためには、もはや外部の力を借りるしかなく、それゆえ一人の反逆者が人間を凌駕する生命力と技術力を有する異星人を連れて地球へと帰還します。

・・・と、ここまでの内容を知って、「あのディックの作品だし面白そう」と思い購入しました。そして読後の感想は、可もなく不可もない★★★。

「可」とするのは、まさに冒頭で述べた設定が面白そうだからです。地球人 vs 異星人という大きな物語だけではなく、地球人 vs 地球人(あるいは公人 vs 私人)という小さな物語も用意されていることに惹かれました。

そして「不可」とするのは、まさにこの惹かれた物語が、実際は小さなというより大きな物語になっているからです。反逆者と異星人についてはあまり描かれず、ほとんどが(旧人 vs 新人であろうと、新人 vs 異人であろうと)人間同士の緊張感の欠いたいがみ合いであったり、中心人物の中年男性と十六歳の少女とのドラマ性の欠いたもつれ合いであったり・・・。

ディック自身もあまり気に入っている作品ではないらしく、それもなるほど肯けます。完全なアタリとも、完全なハズレとも言えないですが、かといって「普通に面白い」とも言いない作品です。言うなれば、曰く言い難し。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年3月21日
読了日 : 2021年3月20日
本棚登録日 : 2021年3月20日

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