ここ(ドリーム・アーキペラゴ)ではどんなことも起こり得る―
時間勾配の歪みにより地図の作成が不可能とされている架空の世界。そこに点在する無数の島からなる通称夢幻諸島(ドリーム・アーキペラゴ)が舞台の物語。英国作家の”信頼できない語り手”ことプリーストが書き記した、死と狂気に彩られた島々に纏わる35の記録譚。
『グールン』~大提督劇場~
商業演劇の演出家を目指し、とある劇場に勤め始めた青年。出演者の一人、謎の王”ロード”を名乗る奇術師との出逢いを発端に様々な出来事が巻き起こる。やがて、執拗に主人公を付け回す不審な小男や奈落での亡霊騒ぎがひとつに繋がっていく。
『チェーナー』~雨の影~
人民裁判所に残されたある殺人事件容疑者の取調べ調書。正常なように見えながら節々に僅かに滲み渡る奇妙な印象を抱かせる自供文。繰り返される肯定と否定。果たして彼は本当に真犯人なのか。
『ミークァ/トレム』~足の速い放浪者~
夢幻諸島の地図を作るため島々の情報を集め飛びまわる無人飛行機ドローン。地図製作チームの一人ローナは、軍の占拠下にある立入制限区域に姿を消した恋人の行方を探ろうとドローンを利用することを思いつくが。異色の恋愛もの。
この他にもたくさんの物語が研究書・覚書き・独白・ガイドブックなど様々な形をとって表されています。それぞれの話がバラバラなようで実は繋がっているなどというところはまさしく群島のよう。詳細を穿って描かれた世界観はまるで本当に実在するかのような心地にしてくれます。夢幻諸島に秘められた物語たちはどこまでも尽きることを知りません。
そんなお話。
- 感想投稿日 : 2016年2月17日
- 読了日 : 2016年2月16日
- 本棚登録日 : 2016年2月16日
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