ひいひい言いながら上巻を読み切ったのが昨年の9月。
読み終わった勢いで、下巻もはりきって書店に取り寄せをお願いしたところまでは、良かったものの。
えー、こほん、上巻で力尽きて、しばらくそのままになっておりました……。
とはいえ、もはや上巻読了から1年以上が経過しそうになり、このままいくとほんとに読まないで終わってしまうかも、それはせっかく上巻を読んだのにあまりにももったいないんじゃないか?!と思うにいたり。
よっしゃと自分に気合を入れて、下巻の読書開始〜。
当たり前かもしれないんですけど、解説とあとがきって、下巻に収録されているんですね。
『ニコマコス倫理学』の「倫理学」は「政治学」に意味が近い、とか、特に初学者にはわかりにくい点が説明されているので、これ、本文を読み始める前に、読みたかったな〜。
でも、上巻を買うときに、下巻も一緒に買う勇気がもてなかったんですよね(笑)、だから仕方ないか。
まあ、そもそも本文には相変わらず歯が立たないから、解説読んでから読み始めても、あまり変わらなかったかもしれないんですけど(とほほ)。
とはいえ、さすがにずっと読んできて少し慣れてきたからか、下巻は「価値の決定」とか「幸福とは何か」とか、特に個人的に面白いと感じるポイントが収録されているからか、いくぶん上巻に比べて能動的に読書が楽しめました。
中でもおもしろかったのが、「外的なものをほどほどに給せられ、自らもって最もうるわしきことがらとなすところを行ない、節度ある仕方でその生涯を送ったひと」を幸福な人だとし、続けて「実際、ほどほどのものを所有しておれば、まさになすべきところをなしうるのである。」とたたみかけ、「アナクサゴラスもまた、幸福なひととは富者や覇者であるとは考えなかったように思われる。」としているところ。
今の社会で生きていると、「ほどほどが一番」「足るを知る」というような価値観もないではないけど、どちらかと言えば「富者」や「覇者」が無条件に幸福であるという暗黙の前提があった上で、「いかに富者や覇者になるか」というようなメッセージを受け取る機会が多い気がします。
だから、長く読み継がれてきた本の中に、「ほどほど」「節度ある」という言葉が登場することがむしろ新鮮に感じられて、同時に、地球温暖化や環境破壊の危機にある今の社会において、これからますますポジティブに捉えられていく幸福論なんじゃないかと思いました。
下巻も相変わらず難しかったので、とても胸をはって「読みきった」とは言えないけれど。
でも、これからは、後世の哲学者の言葉を通して、またアリストテレスの思想に触れることができるし、現代を生きる研究者による解説書から読み解く楽しみもあると思うと、わくわくしています。
最後のページをめくった瞬間に、また新しい読書がはじまるーーそれもまた本を読む楽しみ、ですよね。
- 感想投稿日 : 2021年8月10日
- 読了日 : 2021年8月7日
- 本棚登録日 : 2021年8月7日
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