オーブランの少女 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社 (2016年3月20日発売)
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本棚登録 : 1134
感想 : 106
4

あれこれと雑事に時間をとられているうちに、すっかり久しぶりのブックレビューとなってしまいました。。
手元立て込みやすく、読書すすみ難し……などと、思わずマイ慣用句をつぶやいてしまいたくなりますが、負けずに、めげずに、今年も少しずつ読んで、書いていきたいと思いますっ!

というわけで、新年1冊目のレビューは深緑野分(ふかみどり のわき)『オーブランの少女』です。
もともと、皆川博子さんがインタビューで今気になる若手作家として名前を挙げられていて、読んでみたいな〜と思っていた作家さん。
本屋大賞にノミネートされていた『ベルリンは晴れているか』にもひかれつつ、ちょっと仕事や生活のタイミング的に大作に手を出しにくかったので、短編集・かつ・文庫版と気軽に挑戦できる要素が揃ったこちらから読んでみることにしました。

書名にもなっている「オーブランの少女」をはじめ、いずれも「少女」が主人公か、若しくは話の鍵を握る存在となっているミステリが集められた本書。
まず、私、昔からこの「少女」が美しく、儚く、一途でそれゆえ残酷さを発揮する、というお話がミステリを問わず大好きなんです〜〜。
そして、ミステリは謎解きのスリルも重要だけど、それが展開されるシチュエーションの美しさも大切にしたい派(え? そんな派閥あったっけ、というツッコミはおいておくとして)でありまして。
なので、その2つがバッチリ満たされた表題作「オーブランの少女」と本書のラストを飾る「氷の皇国」の2編が特に印象に残りました。

中でも「オーブランの少女」は、冒頭の美しい花園を管理する謎めいた老女2人の描写から、夢のように美しく展開される少女たちの友情物語、そしてやがてそれを侵食する殺人事件と炙り出された歴史の怖さが圧巻で。
怖い描写の部分が恐ろし過ぎて、これ小さい頃に読んでたら絶対に夢に出てきて困っただろうなーと思いつつ、光あればこそ闇が際立つことも、改めて感じた作品でした。
そして、「オーブランの少女」も「氷の皇国」も、過酷な少女時代を生き抜いて、歳を重ねた老女の存在が描写されているのがいいな、と。
若くて、視野が狭くて、感情的にも未熟だった自分を何らかの形で受け止めて、人々から存在を半ば忘れ去られながらも淡々と暮らす老女もまた、「少女」という存在の一つの発展型なんじゃないか。
勝手な深読みかもしれませんが、人生はやがては実を結んでいくのだという作者のメッセージに思えて、まさに「少女」と「老女」の中間地点にいる自分には、不思議と明るい読後感が残りました。

次回は長編にも挑戦してみたいと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年1月4日
読了日 : 2020年1月4日
本棚登録日 : 2020年1月4日

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コメント 2件

mei2catさんのコメント
2021/01/23

わたしもです!

snowdome1126さんのコメント
2021/01/24

>mei2catさん
コメントありがとうございます!
共通点があって、嬉しいですー^^

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