万葉集の歌のなかでも”エロス”を詠んだ歌に光をあて、思い切った現代語訳により、当時の日本人の恋愛感や性に対するモラルについて、楽しく解説してくれる本。
天皇や貴人から名もなき庶民まで多くの人が詠んだ歌の内容を知ると、現代の常識から見てかなり性に対する意識・嗜好が違うこともあれば、現代に通じるものもあることがわかった。
下着を交換する習慣や、人妻ブーム、「俺のヨメ」発言、BL歌など、著者の現代語訳によって生き生きとよみがえる当時の世相や人々の感情は、読んでいて微笑ましい。
「それで改めて感じるのは、当時の歌がまるでツイッターのつぶやきのようにカジュアルで身近なことだ。約四千五百首中二千首近くが作者未詳であるのも匿名性の高いSNSに似ている。敷居が低いのだ。後世であれば、決して歌にされないようなゴシップや軽口がうたわれている。それでいながら、後世の雅びな歌につながる美しい音や光景もうたわれている。」(P.182)
授業で習った知識でとどまっていた日本最古の和歌集に、あらためて興味がわいた。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
文学・評論
- 感想投稿日 : 2020年2月1日
- 読了日 : 2020年1月31日
- 本棚登録日 : 2020年2月1日
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