獣害列島 増えすぎた日本の野生動物たち (イースト新書)

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  • イースト・プレス (2020年10月10日発売)
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 森林ジャーナリストの著者が、日本国内でシカやイノシシ、サルなどの獣害が増えている実情とその原因を探っていく。獣害対策として最近にわかに注目されている、各地の猟友会やジビエ料理などについても、その裏側の実態や負の側面もしっかり書かれており、新たな発見があった。

 著者の調査によると最近になって急に獣害が増えている訳ではなく、戦中戦後の伐採や毛皮などの需要増によって一時的に落ち込んだものが、今になって元に戻っているだけだという。実際、江戸時代には相当数の獣害があったことが記録に残っていた。
 戦後の急速な植林と現代の放置された山林が野生動物の増加につながっているという考察は、日頃から森林に足を運び、社会や人の営みと森林がどう関わってきたかを見つめ続けてきた著者ならではの視点だと思った。

 害獣というと、シカやイノシシ、サルなどを思い浮かべるが、天然記念物として保護されているトキやタンチョウヅル、ヤンバルクイナも個体数が増えてきて、今や農作物を荒らす”害獣”とみなされているケースもあることは意外だった。また『ネコ・かわいい殺し屋』の内容を紹介しているように、ネコの獰猛ぶりと病原菌は本当に恐ろしいと思っており、飼いネコといえども無闇に近づきたくない。害獣と呼ばれる野生動物だけでなく、家畜やペットとどう関わっていくかも考えさせられた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2023年3月21日
読了日 : 2023年3月17日
本棚登録日 : 2023年3月21日

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