これに星5を付けることに、心理的な抵抗がある。
英国から日本に来た若い女性が行方不明になり、家族がやってきて探してくれるように訴える。
やがて捜査が進み、女性は遺体で発見される。
この、実際に起きた事件が特異なのは、家族が、事件解決に向けて戦略的な動きを見せた、ということのように思える。よくテレビや報道で見るのは、被害者の家族は、うなだれ悲しみ、涙を流しながら訴える姿である。しかし、被害者の父親は、日本の警察の捜査状況に不安を感じ、どうやったらメディアがこの事件を取り上げるかを計算し、行動した。
だからこそ、この事件は大きく取り上げられ、当時のイギリスのブレア首相から日本に申し入れが行われ、日本の警察も捜査に本腰を入れ、その結果解決したように思う。
けれど。
死んだ人は帰ってこないのだ。
このノンフィクションは、事件がなぜ起きたのか、犯人はどうしてこのような事件を起こしたのか、を主軸としていない。今生きている家族らが事件とどのように向き合ったのかを丁寧に描いている。
ホントに小説かと言う位のドラマティックさだ。
……それを、作品として楽しむ自分が居て、それは、いいことなのか、すごく迷いがある。
著者の視点の明快さと優しさがあるから救われた本。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ノンフィクション
- 感想投稿日 : 2015年11月5日
- 読了日 : 2015年11月5日
- 本棚登録日 : 2015年11月5日
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