竜が最後に帰る場所 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2013年9月13日発売)
3.70
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本棚登録 : 1303
感想 : 133
5

いやぁ~、ひさびさの恒川さんだったけど
やっぱこの人の作品にハズレなし。

文章が上手いから淀みなくスラスラ読めるし、
情景描写もしっかりしてるから
読むと必ず絵が浮かび上がるし、
よくある設定であっても
必ず予想の斜め上をゆく展開を用意して
オリジナリティを毎回感じさせてくれるし、
なんで世間一般でイマイチこの人がブレイクしないのか
ちょっと不思議なくらい(笑)
過小評価な作家の一人だと思う(‥;)
(同じテイストの作家で言えば、朱川湊人さんもそう)

本作はデビューから
ホラー、伝奇もの、ファンタジー、SF、妖怪ものなど
「不思議」でちょっとコワい世界を描いてきた恒川さん自らが
「もっとも自分らしい物語の揃った特別な自信作」と言い切るのも頷ける出来映えです。


真偽のほどは分からない、
恨んだ相手を殺すことのできる「精霊を封じ込めた小瓶」の話に幻惑される男を描いた
『風を放つ』、

母の恋人による壮絶なDVによって幼少期の心に深い傷を負った「私」の壮大な復讐劇がコワい!
「アンブレイカブル」やバットマンの「ダークナイト」、
「オールド・ボーイ」「コピーキャット」「メメント」など
様々な映画を下敷きにし、
正義とは何かを読む者に問う構成もお見事!
『迷走のオルネラ』、

現(うつつ)と幻の境をさ迷う
夜行(やぎょう)の一団。
好奇心から参加してしまった男の苦悩を描き、
背後の闇の中で脱落者を待ち受ける異形の群れの描写に震えた!
『夜行の冬』、

この世界に存在する様々なモノに化けた「擬装集合体」なるもの。
この「擬装集合体」を見破って「拡散」させ、
本来の姿を露わにする特殊な力を持った男。
この独創的で素晴らしい設定だけで軽くご飯三杯は食べれるくらいだけど(笑)、
さらに驚愕のストーリー展開が待ち受ける
『鸚鵡(おうむ)幻想曲』、

ある想像上の生き物の誕生から旅立ちまでを描いた幻想小説。
生きることを謳歌し生まれた意味を知り、「キュハリラ」と鳴く美しいキュワワに恋するゴロンドの純粋さに涙…
『ゴロンド』、

など現実社会、異世界、人間のいない世界と全五編に様々な舞台を用意し、
惚れ惚れするほど完成度の高い珠玉の短編集となっております。

特に印象的だったのは
『迷走のオルネラ』の
「君はどう思う?」が口癖で 
本を愛す議論好きなコジマアヤカの魅力的なキャラ設定!
そして真剣に読んでみたくなるほど架空の漫画「月猫」の世界観が
いい。
あとは恒川さんの本領発揮と言える『夜行の冬』のパラレルワールドの怖さとラストの後味の悪さ(笑)、
異世界へジャンプするために夜行するという設定の秀逸さ。
そしてラストを飾る『ゴロンド』はゴロンドが可愛すぎて悶絶したし(笑)、
個人的にもっとも好きな一編でした。


タモリの「世にも奇妙な物語」や
異世界ファンタジーが好きな人、
パラレルワールドの存在を信じてる人、
(僕はもちろん信じてます!笑)

UMAや心霊番組をついつい観ちゃう人、
面白い短編集を探してる人にオススメしまーす。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2015年5月22日
読了日 : 2015年5月22日
本棚登録日 : 2015年5月22日

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