累(5) (イブニングKC)

著者 :
  • 講談社 (2015年3月23日発売)
3.96
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本棚登録 : 662
感想 : 20
5

いや、ホンマ、めちゃくちゃ面白いわ~!
個人的にここ2、3年に発売された漫画の中では一番先が気になる漫画。
もう漫画好きの間ではかなり話題になってるので知ってる人も多いだろうけど、全く無名の新人が描いたとは思えない完成度の高さにホンマ驚きです。

ストーリーは、その醜い容姿から人に忌み嫌われ過酷な道を歩んできた少女・累(かさね)が、女優であった母の遺した他者の顔を奪うことのできる不思議な口紅と出会い、自らの手で人生を切り開いていくスリリングなサスペンス劇。

他人の顔と人生を盗み取って伝説の女優となった亡き母の秘密。
母や口紅の謎をすべてを知る演出家・羽生田釿互(はぶた・きんご)の突然の来訪。
やがて天性の演技力を生かし這い上がるために、美貌を持つが売れない女優・丹沢リナの顔を口紅で奪い、演劇界で生きていく決意をする累。
しかし美しい顔に変えスポットライトを浴びても、
それでもまだ醜い己の卑屈さや自己嫌悪、劣等感からは逃れられないジレンマに累は深く苦悩する。
そして母に瓜二つの美貌を持つ腹違いの妹、野菊の出現で事態は一変する…。

江戸時代に実際に起こったと伝えられる怪談『累ヶ淵』をモチーフに、人の醜さと美しさ、そして偽りをテーマに物語は進んでいきます。

手塚治虫作品や古き良き昭和の頃にあったダイナミックで表情豊かで漫画然とした、独特でいてどこか懐かしい絵柄。
80年代の大映ドラマや昼ドラ臭全開の(笑)ドロドロした愛憎劇を、テンポ良く丹念な心情描写で描いていくストーリーテリングの上手さ。
とにかく褒めるとこしかない漫画なんやけど(笑)、
この漫画の最もスゴい点は
小説家平井和正氏の表現したところの、「疾走感を伴って結末に向かう感覚が継続する」、この『ベクトル感』に尽きます。
次はどうなるのか?早く続きが読みたいとページをめくる手が止められなくなる、
この心地良さこそが名作の証であり必須条件だと思う。

そういう意味ではその条件をすべて満たしているし、深いテーマを扱いながらも
古き良き昭和の漫画が持っていた熱量や、なんだか分からないけど惹きつけられた、漫画という表現がかつて有したワンダー(驚き)の醍醐味を思う存分に味わえる、もはや傑作と言って差し支えない作品だと個人的には評価しています。

破滅への階段をひた走っていくような展開にどうにも胸が痛くなるけど、
個人的心情から言えば、
できうるなら累にはどうか幸せになって欲しい。
どうしてもツラい結末を予想させるし、おそらくそうなることが避けられないと分かっているからこそ、
切に願わずにいられないのですよ…( >_<)

サスペンスやホラー好きさん、
また面白いストーリー漫画をお探しのアナタ、
自信持ってオススメしますよ!
(現在5巻まで出てます)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 漫画
感想投稿日 : 2015年4月6日
読了日 : 2015年4月6日
本棚登録日 : 2015年4月6日

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