先程読み終えたばかり、そのままの勢いです。
フランス文学者である堀江敏幸さんの短編集。
連作の一作目である「スタンス・ドット」の一部分を、
学校のテストで目にしました。
「この後、どのように展開していくと考えられるか、考察した上で解説せよ」
そんな要素があって、自分なりに推察はしました。
でも、実際どうなるのだろうか。
この物静かな流れの中、何か大きな展開が、
待ち受けているとは到底考えられない。
でも、この抜粋文だけでも味わい深いものがある。
ならば、ひたすら読み進めて最後の一文に到達したとき、
何とも言えない感慨を味わえるお話なんだろうな。
どうしても気になって、購入して読み終えたわけですが。
期待通りでした。
池澤さんの解説の通りで、ある意味読者は「ただの傍観者」です。
登場人物たちは皆、
あくまで「ただの雪沼の一般人」として生きているだけで、
物語性を意図して生活しているわけではない。
その自然さを出そうとして、
かえって不自然になって失敗する作品もあるけれど、
この作品は本当に自然で、ありのままの雪沼の人々を描いているよう。
だけど、その一場面、一場面を切り取って眺めた時、
不思議と込み上げてくるものがあったり、
池澤さんの言葉を借りれば「ノスタルジック」な気分になったりする。
終始淡々としているのが、かえってすごくいいのです。
どこか廃れた調子を出すのが、本当にお上手。
個人的な印象としては、それは堀江さんがフランス文学に、
精通していることに由来しているのではないかしら、、、と。
フランス文学の訳書って、
こんな調子に仕上がっているものが多い気がするから。
何にしても、これから私は堀江さんマニアになります。
架空の「雪沼」に住みたいです。
そして、最新作が文庫化するのを心待ちにしています。
- 感想投稿日 : 2012年9月11日
- 読了日 : 2012年9月11日
- 本棚登録日 : 2012年8月19日
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