それから

著者 :
  • 2012年9月27日発売
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本棚登録 : 619
感想 : 49
5

出張に持って行ったキンドルである本を読み始めたのだけれど、どうも気分的に乗れず、キンドル内に積ん読していた『それから』に手を伸ばした。

芸術や文化を追求し、労働はそれを妨げるものにすぎないとして、親のすねをかじりながら生活している代助が、友人・平岡の妻に惚れてしまう。親から勘当され、友人も失いながら恋愛に進むことを選んだ代助だが、生活の糧を得る術を全く持たない自分に気づく。そして、代助の『それから』は破滅に向かうのでは、と思わせて物語は終わる。
初めは、代助をモラトリアム、あるいは現代でいうニートに近い人物としてとらえて軽い気持ちで読んでいたが、この小説が書かれた時代をふと思い出し、実はテーマは重いのでは、と考えを改めた。『それから』が書かれた1909年は、日清戦争、日露戦争に勝利し、西欧列強に肩を並べようとしていた時代。そう考えると、西欧から始まった芸術や文化を追求した代助は、当時の日本の姿そのものに重なってくる。そして、その代助は破滅を予感させて終わる。漱石は、西欧を意識しすぎることへの警笛を鳴らしたかったのか。そう考えると、俄然この小説の重量が増した。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: キンドル
感想投稿日 : 2018年11月18日
読了日 : 2015年7月26日
本棚登録日 : 2018年11月18日

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