憧れの人の思考を辿りたいと思うのは人の常であろう。
あのひとが学生時代にこの本を読んだと言った、
そしてすごく印象に残ったとも言った、
ではその時彼の人の内面でどんな感覚が渦巻いていたのか、
それを知りたいというある意味不純な動機からこの本を手にした。
谷川氏の26歳の時のエッセー(だけではない)集だ。
最初の刊行は1957年、なんと今から60年近く前になる。
そういう背景も織り込んだ上で水茎を辿ると、
若々しくて、乱暴で、瑞々しくて、エッヂの効いた作者の感性に惚れ惚れする。
同時に、
苦味を知って、世間を知って、ひとの恐ろしさを知って、
世界はそう単純ではないことを見つめ始めた作者の深淵にどきりとする。
したためられていることは、
ある側面から見れば極めて陳腐かもしれない。
けれど、
陳腐だからこそ半面の真実を衝いているのであろうとも思う。
男とは、女とは。
そういうことを、相手が躊躇うほどの強さで語る時があっても良い。
愛とは、恋とは、音楽とは、宇宙とは、芸術とは、生きるとは。
そういうことを、形が掴めないままに言葉として表現してみることがあっても良い。
美しくて、生々しくて、グロテスクで、退屈なもの。
それでも目で追ってしまうもの。
そういうもの、が、ぎぅと詰まった1冊。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
感覚系。
- 感想投稿日 : 2013年4月7日
- 読了日 : 2013年4月6日
- 本棚登録日 : 2013年4月6日
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