解像度を上げる――曖昧な思考を明晰にする「深さ・広さ・構造・時間」の4視点と行動法

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  • 英治出版 (2022年11月19日発売)
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【感想】
1 解像度が高いとはどういう状態か
解像度…物事への理解度や、物事を表現するときの精細さ、思考の明晰さを、画像の粗さや精細さのビジュアルイメージを想起させながら示す言葉として用いられる。
たとえば、解像度が低いと言われる状態として、以下のようなものがある。
・物事への理解が足りていないように見える。
・議論がふわっとしていて地に足が着いていない。
・具体的な数字などを挙げられず、説得力が弱い。
・抽象論だけで、具体例が挙げられない。

逆に、解像度が高いとは、相手の持つ課題を、時間軸を考慮に入れながら、深く、広く、構造的に捉えて、その課題に最も効果的な解決策を提供できていること。
解像度の高さは「深さ」「広さ」「構造」「時間」の4要素から導かれる。
①深さ…問題や課題の原因、要因、方法を細かく具体的に掘り下げる。縦軸の大きさ。
②広さ…考慮する原因や要因、アプローチの多様性を確保し、もともと考えていたのとは別の所にある原因や可能性に気づく。視野の切り替え。横軸の大きさ。
③構造…深さや広さの視点で見えてきた要素を、意味のある形で分け、共通部分、相違部分など、要素間の関係性やそれぞれの相対的な重要性を理解する。
④時間…時間の変化、因果関係、物事のプロセス、流れをとらえる。

4つ全て重要だが、まずは深さを確保することに努めよう。


2 今どこまで見えている?
「状況」という状況で
「課題」という課題を持つ
「対象顧客」向けの
「製品/サービス名」という
「製品/サービスジャンル」です。
これには「利点」という利点があります。
「既存の代替品・競合」とは違い
「差別化要素」が備わっています。

以上の「」の中を、自分の構想しているアイデアで埋められるだろうか。また、埋めたあとどこまで具体的に話せるだろうか。

①深さが見えているか…どこまで細かく具体的に言えるか。ふわっとしていて、多くの事例に当てはまるような、よく聞く話では深さが足りない。その理由を7段階以上掘り下げられるかチェックする。
②広さが見えているか…幅広い選択肢をきちんと知っているか。競合製品との詳細かつ多面的な比較が言えるか。
③構造が見えているか…簡潔に埋められたか。ユニークな洞察があったか。
④時間が見えているか…短期的な目標は何で、長期的な目標としてどこまで辿り着きたいのか、そこに至るまでの道筋はどういったもので、なぜこの道筋が最適なのか、そして長い道のりの中での途中の到達目標を数値で明確に言えるか。


3 解像度を上げるための取り組み
まず行動する。高い解像度には情報×思考×行動の組み合わせで至ることができる。思考の材料となる情報が間違っていれば、どんなに思考能力が高くても正しい答えは出せない。どんなに素晴らしい情報を持っていても、思考が下手であれば良い判断はできない。そして良い情報と良い思考を持っていても、行動しなければ何も起こらないし、結果からフィードバックを得ることもできない。
情報と思考と行動のすべてのレベルが高いことが理想。しかし、解像度を上げるうえではまず、情報や思考がまだ粗い状態でも、行動量を増やす、つまり、とにかく最初に行動し始めることが大切。行動すればフィードバックを得られるため、情報と思考の質を高めていくことにつながるからだ。

周りから批判されないように、完璧なものを作ってから周りに共有しようとしてしまいがちだが、それでは多くのムダが生まれる。まずは試作段階、検討段階でもとにかく世に発表すること。そうすれば新たな情報が得られて、その新たな情報を用いて思考をし直すサイクルを行える。


4 課題の解像度――まずは深さから
症状ではなく病因に注目する。
市場の課題と顧客の課題を混同しない。市場の課題は、企業や個人の課題の集積や、市場の制度が生んだ「症状」。「病因」は、「目の前にいる一人の顧客は、いったい何に困っているのか」というミクロな顧客の課題。お金を払うのは顧客であり、顧客の課題が分かっていなければ、適切な製品(病因に対する薬)を作ることができない。そして適切な製品を作ることができなければ、市場の課題という症状を解決することもできない。
それに市場の分析やデータから見える「市場の課題」の事実は、多くの人が知っている。他企業と差別化ができるポイントは、そうした誰でも手に入るデータではなく、少数の人しか持っていない顧客の課題への洞察である。

深さのレベルを上げるには、
①今自分が考えている課題を言語化する(外化)
→仮説をとにかく紙に書き、考える土台にする。声に出して喋る、説明する。
②サーベイをする(内化)
→情報を集める。大量の情報を仕入れるため、最低100の事例を集める。本、動画、講演などで情報収集する。
③インタビューをする(内化)
→顧客や相手にインタビューする。ただし、顧客の意見ではなく事実を尋ねる(何が欲しいかは聞かない)。思考は顧客に任せすぎず、自分で行う。
④現場に没入する(内化)
→現場で起こっている現象を自ら体験する。可能な限り写真や動画を撮り、観察結果をニュースのように書き起こし、言語化する。
⑤個に迫る(内化)
→一人の顧客に集中して深堀りする。
⑥Why so?を繰り返して、事実から洞察を導く(外化)
→取り入れた情報について「なぜそうなっているのか?」「どうしてそうではない(今まで解決されていなかった)のか?」と繰り返し続ける。
⑦習慣的に言語化する(外化)
→メモをする。誰かと対話する。教える。
⑧コミュニティで深堀りを加速する


5 課題の解像度――広さ、構造、時間
・広さ…物事の前提を疑う。視座を変える(高くする、相手の視座に立つ)。体験する(競合製品を使い倒す)。
・構造…情報を分ける。要素を比べる。関係づける。省く。
・時間…変化を見る。プロセスやステップを見る。流れを見る。歴史を振り返る。


6 解決策の解像度
・深さ…言語化してみる(プレスリリースの形で言語化する)。Howを問い続ける。専門性を磨く。プロトタイプを作る、ロールプレイをしてみる、競合製品を使い倒すなど、手や体を使って考える。
・広さ…知識を増やす。人と話す。外部資源を活用する。解決策の真の意味を考える。
・構造…解決する範囲を決める。構造のパターンを学ぶ。新しい関係性を生み出す。捨てることや省くことを忘れない。制約を意識する。他システムとの連携を考慮に入れる。
・時間…二手先、三手先をシミュレーションする。好循環を作ることを意識する。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年10月22日
読了日 : 2023年10月22日
本棚登録日 : 2023年10月22日

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