緊張感を帯びたオープニング。寂寥とした荒野にゆらゆらと現れ、突如舞い踊る一人の女。狂気を帯びた悲しげな表情が物語を奈落へと突き進ませる。
だれもが顔見知りのような小さな村で女子高生殺人が起こり、知的障害を抱えた愛息トジュンが犯人に仕立てられてしまう。
「あの子に人殺しなんてできるわけない」ここから彼を溺愛する母親の、事件究明に向けた奔走がはじまり、その村に潜む腐敗や若者達の実態が明らかになってゆく。
知的障害者にまつわる「純粋無垢たるべし」なる偏見、母なるものの「わが子へのかけがえのない愛」という誤謬。そうした我々の危うい倫理の見方を逆手に取った怪作である。彼は何も記憶がなく、言われるがままに犯罪者となったのか。この母と子の間にはたして何があったのか。
韓国の母とも称される大女優キム・ヘジャの怪物ぶりが最後の最後まで際立つ。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
サスペンス / ミステリー
- 感想投稿日 : 2010年8月1日
- 読了日 : 2010年7月30日
- 本棚登録日 : 2010年8月1日
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